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第152話 想い 4-4
仲がよかったとは思いがたいやり取りだけれど、藤堂の態度がほかの誰よりも遠慮がないところを見ると、峰岸相手だと普段は裏側に隠している部分が大いに出るようだ。それだけ峰岸に気を許している証拠なのかもしれない。
「藤堂どうした? なにか用事あったか?」
少しそんな部分を垣間見て驚いてしまったが、急に目の前に立ちはだかった背中に僕は首を捻った。そして目先にあった左肘を掴んで引けばゆっくりと藤堂が振り向く。
「なにも用事はないですけど」
「え、そうか」
ふと困ったように眉を寄せた藤堂を瞬きして見れば、肘を掴んでいた手を反対側の右手で強く引っ張られた。あまりに突然のことで、腕はさほど強く引っ張られていないのに、あっという間に身体は藤堂の腕の中に収まってしまう。
「ちょ、藤堂」
峰岸の目の前でもあるこの場所で、この状況はまずい気がする。けれど慌てて身体を引くが、両腕で抱きしめられれば離れようがない。
「油断し過ぎです」
「は? ああ、そうか。悪い」
一瞬意味がわからず首を傾げそうになったが、苦虫を噛み潰したような藤堂の表情でそれを悟った。それはこのあいだ、注意されたばかりの危機管理能力というやつか。でもいままでこんなことに遭遇したことがほとんどないので、あまり気をつけようがないというのが正直なところだ。いや、普通に生活していたら、やはりこんなことはそう起きない。
「センセのその隙だらけな感じがいいのに」
「お前は黙れ」
峰岸の呟きを空かさず遮る藤堂の様子に思わず苦笑いしてしまう。峰岸を引っぱたいた三島といい、この峰岸を罵倒する片平といい、本当にみんな峰岸には容赦がないなと思った。
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