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第157話 想い 6-1
昼休みに入り実行委員指定の会議室へ行くと、三年全クラスの委員が集まっている様子はなく、生徒会役員とまばらに生徒の姿があるだけだった。三年は昼と放課後とで、参加できるほうへ来てもらっているらしいのだが、昼はどうにも片寄って女子が多いのは気のせいか。
「やっぱりニッシーも捕らわれの身?」
与えられた仕事を遂行するべく、机に向かい黙々と紙面にペンを走らせていると、ふいにぼそぼそとした小さな声が聞こえた。その声に視線を持ち上げて見れば、机の端から目だけを覗かせる黄色い頭があった。
「ほかに誰が捕らわれの身なんだ?」
小さな問いかけに首を傾げると、ひらひらと手が振られる。
「俺、俺!」
「は? どこがだよ。相手がお前じゃ、捕まえてもすぐ飛び出して行きそうじゃないか」
「……わかってないなぁ」
自身を指差し笑った彼のその仕草に、思わず苦笑いを浮かべたら口を曲げられた。けれどいつもの彼ならば、間違いなく捕まえたそばから、身軽な動きでするりと逃げて行きそうな雰囲気がある。
「それよりなんで隠れてるんだ神楽坂」
机の端から見える、綺麗に染め上げてキラキラとした黄色い頭を僕がペンの後ろでつつくと、その頭がビクリと動いた。
「しー、寝てるライオンが目を覚ますから!」
慌てて人差し指を口元に当てる神楽坂に僕は思わず首を傾ける。言っている意味がよくわからず、彼がちらちらと視線を向けている先へ顔を向けた。そこには部屋の隅へ移動させた机で、僕と同じように書類の束を片付けている峰岸の姿があった。
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