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第172話 休息 1-1

 お互い意外と晴れ男なのかもしれない。開いたカーテンの向こうに見えた青空に、僕は目を細めた。昨日の天気予報では今日明日は雨で、かなり心配していたのだが、いまは雲一つない綺麗な空だ。  前に出かけた時もこんなにいい天気だったなと、ふいに思い出して口元が緩む。朝、目が覚めてからなんだかずっとそわそわしている自分がいる。その理由には気づいているけど、気恥ずかしくていまはあまり考えないでおこうと思う。 「うーん、いい天気」  欠伸と共にそう呟いて、僕は大きく伸びをしてから寝間着のTシャツとハーフパンツをベッドの上に放り投げる。着替えたその服装は、長袖のTシャツにデニム、トレーナー地のジップパーカーで、以前に出かけた時とあまり変わらないが、まあそこは気にしない。それによそ行きなおしゃれな服などほとんど持っていないし、今日の行き先ならばこんなもんだろう。 「それなりに歩くだろうしな」  連休前に藤堂の予定に合わせてスケジュールを調整し、約束した通り二人で出かける計画は今日、無事決行されることになった。一応、藤堂が行きたいところという名目なのだが、正直言うと首を傾げる部分がある。 「なにか違う気がするんだよな」  これから向かう場所を思い浮かべ僕は思わず小さく唸る。あの時、藤堂が選んだ場所はどう考えても、彼の口からなんの躊躇いもなく出るような場所には思えなかった。多分きっと嫌いではないだろうが、それでもやっぱり少し違う気がする。  なぜならそこは僕自身が好きな場所だからだ。大体そのことを知っていなければ、藤堂の口から――動物園へ行こう、なんて言葉が出るはずがない。 「結局、僕の行きたいとこじゃないか」  藤堂の行きたいところに行こうと言ったのに、ため息交じりに呟けば、図ったように携帯電話が鳴った。慌ててそれを開くと、メールを受信している。

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