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第171話 想い 8-6
「しっ、あんまり大きい声を出すと廊下に響きますから、ね」
「誰か来たらどうするんだよ。学校ではスキンシップ禁止」
ぎゅっと腕に力を込められ、それを咎めるように軽く叩けば、藤堂は少し不服そうに目を細める。
「学校でしかほとんど会えないのに、触れられないのって結構拷問です」
「うっ、でもな」
それを言われてしまうとかなり弱い。僕も本当はもう少し傍にいたいと思うし、触れていられたらいいなとも思う。
「わかってます。佐樹さんを困らせたいわけじゃないですから」
うろたえた僕を見て困ったように笑う藤堂。逆に彼を困らせているのは自分だ。体裁など気にせず傍にいられればいいのだろうけど、そう簡単に行かないのが現実だ。
「来週から連休に入るので、どこか行きましょう二人で」
「あ、うん。そうだな」
離れた藤堂の手は抱きしめる代わりに僕の両手を握った。
「佐樹さんはどこに行きたい?」
「お前の行きたいところでいい。連休中もバイトあるんだろ? 数少ない休みなんだし」
「俺の、ですか?」
「ああ」
「そうですね、じゃあ」
しばらく考える素振りを見せていた藤堂は、なにかを思いついたのか、ふいに顔を上げて笑みを浮かべる。
そして彼の言葉に僕は目を丸くした。
[想い / end]
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