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第280話 邂逅 4-4

 そういえば渉さんとは高校時代に知り合ったが、僕はいまだに彼の連絡先を知らない。連絡したい時や、向こうが僕に用がある時は必ずあいだに明良が入る。別に僕は連絡先くらい交わしても構わないと思うのだが、本当にいままで気づかなかったのがおかしいくらいだ。  常日頃会うわけではないけれど、彼とはもう十三年来の付き合いだ。今更でも教えてもいいだろうか。 「あの、渉さん」 「そうだ、どんな人を探してるの? なにかあったの?」  意を決して声をかけるが、振り返った渉さんにそれは遮られた。 「えっ、あー、落とし物を拾って、交番に届けようと思ったんだけど」 「落とし主を見かけちゃったんだ? どんな人?」 「えーと、形容しにくいんだけど。大学生くらいかな。背が高くて派手じゃないけど、すごく格好いい感じの子で……でも髪も服装も黒っぽくて」  人探しをするには特徴を上げにくい。見れば絶対にすぐわかる容姿なのに、言葉で説明するのは難し過ぎる。 「ふぅん、格好いい子ねぇ」 「わからないよな」  急に目を細め、遠くへ視線を向けた渉さんの仕草に肩が落ちる。いまの説明でわかったらもうそれは超人か、ただの知り合いだ。 「ほかには? 誰かと一緒だったりした?」  気落ちした僕に気づいたのか、渉さんはやんわりと笑みを浮かべて僕の頭を撫でた。 「……誰か、誰かと一緒。あ、いた、ものすごい派手な子と」  言葉で形容するには最適な。遠くから来てもすぐわかるようなど派手な子がいた。

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