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第279話 邂逅 4-3
渉さんはいつ見ても綺麗で、男の自分から見ても格好いいと思える。しかも彼は会うたびに若返っているような気さえする。
「佐樹ちゃん?」
人の目をじっと見て話すのは彼の癖なのか、綺麗なエメラルドの瞳――そこから逃れるのに僕はいつも必死だ。
「人探ししてるって、こんなところで誰を探すの?」
「え、それは誰と言われるとわからないんだけど」
完全にまた見失ってしまった後ろ姿を探して、辺りに視線をさ迷わせると、渉さんは少し考える素振りをして首を傾げた。
「んー、俺が探してあげる。特徴とか教えてくれる? この辺りは、佐樹ちゃんより詳しいからさ」
「いや、それは悪いから」
「俺は佐樹ちゃんがこんなとこウロウロしているほうが怖くて仕方ないから、ね」
いい歳した大人が子供のような心配されると、非常に微妙な気分だ。不満げな表情が顔に出ていたのか、渉さんは僕の顔を見下ろして苦笑いを浮かべている。けれど小さく息を吐きながらも、僕の頭や肩に積もった雪を指先で払うと、彼はおもむろに僕の手を掴み歩き始めた。
「渉さん?」
「ほんと、佐樹ちゃんは相変わらず頑固だよねぇ。俺から離れないって、約束してくれたら一緒に連れて行ってあげる」
それは握られた手を離すなと言うことなのだろうか。言葉より先に、渉さんは僕が向かっていた方向へ歩き始めていた。
「佐樹ちゃん、俺と今日ここで会ったことは明良には内緒だよ。あいつ、勝手に佐樹ちゃんに会うと怒るんだ」
「……え」
どこか寂しそうな笑みを浮かべる、渉さんの表情に驚いた。あまりそんな風に笑った顔は見たことがない。
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