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第278話 邂逅 4-2

 雪空はいつもの夜空より少し明るく感じる。闇空の蒼に淡く白が混じるからだろうか。寒さは得意ではないけれど、冬と言う季節はどこか幻想的で好きだ。 「さて、帰る前に交番に寄って行かない……と」  上着のポケットに入れていたライターを取り出し、交番へ向かおうとした僕の目先を思いがけず彼が横切った。そして道路を一本挟んだ向こうを足早に歩くその姿を、頭で認識するより先に僕は追いかけていた。 「また見失いそう」  背が高いとはいえ、着ている服が全体的にモノトーンなせいか、陽のない夜に溶け込み、背中を追う彼が人混みに紛れがちだ。必死で彼の背中だけを見つめて走れば、急に視界が遮られた。 「……痛っ!」  遮られたと言うのは正しくない。前から歩いて来た人に、正面から思い切りよくぶつかってしまった。 「すみません!」 「あ、ごめん……って、嘘、佐樹ちゃん?」  ふらついて後ろへ下がってしまった僕の身体を支えたその人は、顔をさする僕を見下ろし目を見開いていた。 「あれ、渉さん?」 「な、な、なんでこんなとこにいるの?」  うろたえているのか、渉さんの声は上擦り、裏返ったように高くなる。その様子に首を傾げれば、困ったように眉を寄せて彼は僕を見つめ続けた。 「あの、渉さん。いま、人を探していて」  身体を抱き寄せられ、赤くなったらしい鼻先を指で優しく撫でられる。いつまでもこちらから外れない視線に、さすがに気恥ずかしさを感じ始めてきた。  キラキラとした金茶色の髪、すらりと細身だけれどまっすぐとした佇まいは男らしい。

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