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第277話 邂逅 4-1

 慌てて彼らが歩いて行ったほうへ走るが、視線を巡らせてもやはりその姿は見つからない。 「どうしようか」  おそらくこれは結構高価なZippoのはずだ。昔、大学の友人にコレクターがいたので、なんとなく見たことがある。交番に届けるか――いや、交番になんてわざわざ取りに行きそうな子には見えなかった。じゃあ、見なかったことにして置いて行くか。いやそれだと今度は間違いなくほかの第三者に拾われるだろう。 「この辺で遊んでるなら、また会うなんてこと……ないか」  偶然道で出会った人間に、再び出会える確率は低過ぎる。やはり交番に届けるのが無難か。しかしいまはあまり時間がない。 「ヤバい。店が閉まりそう」  交番へ寄るならまたここは通る。とりあえず目先の用事を済ませることに決めると、僕は駅ビルに走り込んで行った。  女性へのプレゼントはそれが身内でも随分と気を遣う。毎年同じものにならないように、買ったものはいつも手帳に書き込んでいた。それでもどんどんネタ切れになってくるから、頭を悩ませることになる。 「とりあえず任務完了」  閉店のアナウンスを聞きながら、店員の女の子にすべてを任せて、慌ただしく僕は買い物を終了させた。日付指定をして伝票に住所や名前を書き込んでいると、ふいに店員が小さな声を上げた。  ショーウインドウの向こう側で先ほどより粒の大きくなった雪がちらついている。 「また、積もりそうですね。帰り道お気をつけください」  扉を開き恭しく頭を下げた店員に、ありがとうと告げて、僕は薄らと雪化粧を施された白い路面にゆっくりと足を踏み出す。僕の姿が遠く離れるまで頭を下げているだろう店員の気配を感じてはいるが、僕はつい視界に入るほどに降りしきる雪につられ薄暗い空を見上げてしまう。

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