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第624話 夏日 13-2
「……ぁっ」
首筋や鎖骨の辺りにチクリとした甘い痺れを感じて、上擦った声が漏れた。そんな僕を煽るように舌先が喉元をくすぐり、指先が背中をなぞっていく。そして小さく声を上げるたびに、それはますます僕を追い詰める。
余すことなく唇や手のひらが僕の身体に触れ、藤堂が愛おしいと思う感情も、身体も心も暴かれていく。じわりじわりとこみ上げてくる感覚に打ち震えていると、首筋に藤堂がやんわりと噛みついた。その感触に身体はびくりと跳ね上がる。
「佐樹さん、愛してる。佐樹さんのすべてが愛おしくて仕方がないよ」
ふいに囁かれたと甘くて優しい言葉に、心も身体も愛おしさが溢れて溺れてしまいそうだと思った。そしてこんなに肌を重ね合わせることが幸せだと感じたのは初めてだった。肌と肌が触れ合うたび感じる熱も、吐息から感じる熱も、いままで感じたことのない気持ちを募らせる。
もっと触れたい、もっと触れて欲しい。そう思うほど藤堂のすべてが欲しくなる。ぼやけた視線の先にいる藤堂が、まっすぐに僕を見下ろすたびにその目に縫い止められてしまう。心がこれ以上に愛せる人はいないと声を上げる。その声に突き動かされるままに目の前の身体を強く抱きしめた。
もうお互いしか感じられないくらい、求め合うままに抱き合い、そして交わると、熱に浮かされて身体が溶け出してしまいそうになる。藤堂の熱を身体の奥に感じて、それがひどく嬉しくてますます視界が潤む。触れ合う肌も唇も、滴る汗も、なにもかもが刺激となり身体中が震える。けれど無我夢中で抱き合っているうちに、僕はいつしか藤堂の腕の中で気を失うように眠りについた。
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