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第623話 夏日 13-1

 抱き上げられていた身体がゆっくりとベッドへ沈んだ。そしてお互いの手を握り合わせ僕を見下ろす藤堂の視線に、息が止まりそうなくらい心臓は忙しなく動いている。けれどまっすぐと向けられている視線から目を離すことはできなかった。  しばらく見つめ合ったまま身じろぎもしなかったけれど、握る手に小さく力を込めると、ゆっくりと藤堂が近づき口づけを落とされた。最初は優しく触れ合うだけだったそれは、何度も繰り返すうちに熱がこもり、次第に深くなっていく。 「ん、ぁ……」  熱く絡む舌が淫靡な音を立てて、自分の口先から甘え縋るような声が漏れる。するといつしか身体は火照るように熱くなっていく。  解かれた藤堂の手がTシャツの裾から滑り込み肌に触れれば、ますます身体の熱が昂ぶり肩が小さく震えた。そしてさらに手のひらで身体のラインを優しくなぞられると、熱い息と共に声を上げてしまう。どんどんと肌が外気にさらされていくたびに、藤堂はひどく愛おしげに僕を見つめる。彼に触れられていると思うだけで、触れる場所すべてが痺れるような気がした。  視線も指先も唇も、吐息さえも愛おしい。 「藤堂」  掠れた声で小さく名前を呼ぶと、優しく微笑んで額にやんわりと唇を落としてくれる。それがひどく嬉しくて、腕を伸ばして僕は藤堂を強く抱きしめた。 「好き、好きだ。お前が好きだよ」  湧き上がる感情はどうしても抑えきれなくて、目尻に浮かんだものがとめどなく滑り落ちていく。どうしてこんなに愛おしいのだろう。どうしてこんなに藤堂を求めてしまうんだろう。触れているだけで、心が満たされていく。  想いと一緒に溢れる雫を藤堂の唇は拭い取ってくれた。そして瞼に触れ、頬を滑り、唇は首筋を伝い落ちる。

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