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桜の記憶 2
綺麗な桜色に見とれているうちに電車は駅に滑り込む。
待ちきれない気持ちで開いた扉から足を踏み出し、二人で手を繋いで公園へと向かって歩く。平日と言うこともあって人はたくさんいるものの、そこまで混雑した感じではない。あちこちでシートを広げて花見をしている先客たちに目を向けながら、空いたスペースはないかと公園の奥へと足を進める。
「佐樹さん、こっち」
「ん?」
ふいに足を止めた優哉が道をそれた方向へ指先を向ける。それにつられてその先を見ると、微かに草が折れて細い道になっているところがあった。二人で顔を見合わせて方向転換をすると、その道を辿ってみることにする。
しばらく草地を進んで、生い茂った木々をかき分けてみれば、急に目の前が開けた。
「うわっ、すごい眺め」
「隠れた穴場ですね」
目の前に現れたのは開けた空き地。ぐるりと草木に覆われたそこはぽっかりと半径二、三メートルくらいの空間が広がっていた。そしてそこには大きな桜の木が一本。こぼれ落ちそうなくらい花をつけている。
二人でその桜を見つめしばらくぼんやりとしてしまった。
「佐樹さん、ここで花見にしましょう」
「ああ、うん」
手にしていた荷物を置いて、広いそこへレジャーシートを広げる。四隅を小石で抑えると、僕たちはそこに腰を下ろしてまた柔らかな桜色を見上げた。
「ここなら、ゆっくりできるな」
「そうですね。ここなら、こうしていても周りを気にしなくていいですよね」
「え! わ、優哉?」
隣に座っていたはずの優哉がふいに僕の膝の上に頭を乗せてごろりと横になる。急に膝の上に重みを感じて、そのぬくもりに頬が熱くなった。けれどそれを押しのけることはできそうもなくて、僕は赤くなっているだろう顔を俯けながら優哉の髪を撫でる。
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