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第16話
「なんか悩みごと?」
お弁当を食べ進めていたはずの山田君が、いつの間にか顔を覗き込んでいた。
「え?」
「なんか今日の望月、ずっとグルグルしてっからさ」
「ぐるぐる?」
「うん。困ったーっ、みたいな感じ」
そう言ってわざとらしく眉を寄せる山田君。これは多分、俺のモノマネをしているのだろう。
(俺、こんな険しい顔してたんだ‥‥‥)
もうちょっとポーカーフェイスしなくちゃ、と思って左頬に手を当てる。そしたら何故か、山田君の手が反対の頬に当てられた。そしてそのままムニッと頬肉を引き上げられる。
「ひゃ、ひゃまだくん‥‥‥?」
状況が理解出来なくて戸惑っていると、ひとり納得した様子の山田君はニッと笑って手を離した。
「俺でよかったら話聞くし」
「え」
「まあ、俺じゃ頼りないかもしんねえけど!けど、一人で抱えるよりはマシだろ?」
「な、んで」
(そんなに親切にしてくれるの?)
全てを聞く前に、山田君眩しい笑顔のまま答えをくれた。
「さっき言ったろ?望月と仲良くなりたいって」
(俺と?本当に?)
相変わらずの悪い癖が出そうになったけど、やっぱり思い直す。
多分だけど山田君は嘘は言ってない。山田君の視線や声色は真剣そのものだから、きっと本気で俺のことを気にかけてくれてるんだ。
だから疑うのは駄目だ。
疑うのをやめて素直になれば、何か変わるかもしれないし。
そんな希望を胸に、俺は山田君に相談することにした。けど、先生の立場を考えると本当のことは言えないから、少しだけ、ほんの少しだけ、聞いてもらうことにしよう。
「あの、ね」
「うん」
「‥‥‥家族ってなんだろ」
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