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第18話
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放課後、家に帰ってすぐ荷物を詰めた。詰めたと言っても、換えのワイシャツと私服と下着と、教科書類と、お金くらいしかなかったからすぐに終わったけれど。
そして五時半には玄関待機。廊下に腰を下ろして、先生を待つ。
約束は六時半。
どうして一時間も前から待ってるのかというと、俺のことだからすぐにまた尻込みしてしまうと思ったから。
自分なんかが誰かと共同生活できるのか。本当は迷惑なんじゃないか。
そんなことを考えて、口が勝手に「いいえ」って動いてしまうかもしれない。
(けど......逃げたくないから)
荷物を用意してるとき、なんだか嬉しくなった。自分のなかの隙間が埋まっていくような、そんな気がした。
今回は逃げたくない。進みたい。
先生と、一緒に居てみたい。
だからこうして、先生が玄関に入った瞬間に俺の答えが分かるような、逃げられない状況を作った。少しずるいかもしれないけど、これなら後戻りは出来ない。
じっと待つこと、一時間。
ピンポーン、とチャイムが鳴った。
俺は立ち上がって、肩にかかっているショルダーを握りしめる。
ここを開けたら、始まる。
不安なような、期待のような、そんな感情を胸に扉をゆっくりと開いた。
「心」
先生の姿を見た瞬間、胸がぎゅっとした。名前を呼ばれただけで、こんなにも泣きそうになるのは何でだろう。
「先生、俺......」
「ん?......心」
俺と俺の荷物を見た先生が少しだけ驚いた顔をする。その顔に不安になったけど、すぐに咲いた笑顔に心が晴れやかになった。
「これからよろしくな」
そう言って降りてきた先生の手は俺の体温と比べるとやっぱり冷たくて、でも不思議と心は暖かくなる。
「よろしく、お願いします」
こうして、先生と俺の、二人の秘め事が始まった。
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