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第19話

* 先生の車に乗って、先生の家へとやって来た。 小さいけど、綺麗なアパート。 階段を上って二階に、先生の部屋がある。 中は1LDKの部屋であまり物がなく、落ち着いた印象を受けた。 「本当は1DKと悩んだんだけど、こうなるならこっちにしといて正解だったな」 ネクタイを外しながら笑う先生。俺はその近くに行って床に正座する。 「あ、あの……話したいことが」 「ん?」 改まる俺に先生もしゃがみこんで視線を合わせてくれる。キラキラした目に見つめられて、一瞬視線を逸らしかけたけど、なんとか思いとどまって話を切り出した。 「来といてアレなんですけど……やっぱり迷惑はかけたくなくて。家賃とか生活費はもちろん払うつもりなんですけど……家事とかも、俺にやらせてください」 やっぱりただ来るのは憚られて、自分で作った妥協案。少しでも先生の役に立てば、一緒に暮らしても良いんじゃないかと、自分なりに考えてみた。 そんな俺の考えに先生は「んー」と考え込んで、すぐに爽やかな笑顔で俺を見る。 「まず、家賃も生活費も要りません」 「で、でもっ!」 「元々俺が全部払ってたんだから、いいの」 「……けど」 納得いかなくて食い下がろうとしたけど、その前に先生の手が頭に乗った。その行為に弱い俺は口を噤むしかなくなる。 「でも、家事はお願いしたいかな。俺、実はそんなに得意じゃないんだよな」 「お弁当、あんなに美味しかったのに……?」 「そう言ってくれるの心だけだよ」 先生は苦笑を漏らしつつ立ち上がり、俺もグイッと手を引かれて立ち上がる。優しい雰囲気の先生がこんな力を出せるなんて、不思議な感じがする。 「もちろん、テスト前とか忙しい時はしなくて良いし。だから、普段はお願いして良い?」 「て、テスト前もやりますっ!」 「ははっ。まあ、様子見ながらな。二人で協力していこう」 そう言った先生はまた俺の頭を撫でて、寝室らしき部屋へと着替えに入っていった。

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