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第66話
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「ああ〰︎〰︎。やーっと終わったー」
今日でテスト最終日。最後の科目が終わってすぐに、唸る山田君がやって来た。座ってる俺に後ろからもたれかかってくる山田君を、なんとか受け止めながら、労いの言葉をかける。
「お疲れ様、山田君」
「マジで疲れたー!でも、望月に教えてもらったおかげで、いつもよりは出来た気がする!」
放課後はバイトとか夕食の準備までの時間、少しだけだけど一緒に勉強をした。
家事の件は、先生は無理しないでって言ってくれたけど、むしろ気分転換にもなるからという理由で、なんとか納得してもらった。先生も答案作成とかで忙しいのに、俺だけ楽するわけにはいかない。
そんな訳で、少しの時間しか山田君の力になれなかったけど、ニカッと顔を覗き込んでくる山田君の顔を見るに、しっかり頑張った成果が出たみたい。
「もーマジで助かった!あんな優しく教えてくれるやつ、他にいないもん!」
遠くの席から「それは、山田があまりにも馬鹿すぎるからさ」と松野君の声が聞こえたけど、山田君には聞こえなかったみたいで、俺が代わりに松野君に苦笑いを返しておく。
「ありがと!望月!」
「役に立てたなら良かった」
本当に嬉しそうに笑う山田君を見てると、なんだか俺も嬉しい気持ちになって、笑い返すと、急に山田君がピタッと硬直した。
「山田君?」
「も、ももも、望月……」
「ん?」
「笑った!笑った!!めっちゃくちゃ可愛い!!」
「わっ」
後ろからぎゅうと抱きしめられて頬擦りされる。驚いたけど嫌ではなくて、そのままされるがままになってたら、ガラッと教室の扉が開いた。
(あ、先生だ……)
目が合った先生は少しだけ目を丸くした。いつもと様子が違う先生を不思議に思ったけど、すぐにいつもの先生に戻ったので気のせいだったと思い直す。
「こーら、山田。LHR始めるから、席に着けよー」
「やべっ!チャイム鳴ってた!?」
「1分前になー」
「わわっ。サーセン!!」
おどけた口調の先生に注意された山田君が、慌てて前の方の席に戻る。クラスの皆はそんな山田君の様子に笑い、教室が和やかな雰囲気に包まれた。
(やっぱり山田君は人気者だな)
なんて微笑ましく思っているうちに、先生がLHRを始める。
「じゃあ、体育祭の説明なー」
二週間後には体育祭。
高校に入って初めての学校行事にワクワクしながら、先生の説明を聞いた。
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