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第84話 高谷広side

* 車を走らせながら、叔父さんに電話を掛ける。数コール後に、車のスピーカーから、めんどくさそうな声が流れた。 『なんだ』 「心は家にいますか」 『なんだ、いきなり』 「嘘つきましたよね。貴方は心に一緒に暮らそうなんて言っていない」 答えざるを得ないよう、強めの口調で問いかけると、叔父さんはため息を漏らした。 『……家にはいない』 「じゃあ、どこです?」 『知らん』 「は?居場所が分からないってことですか?なんで心配しないんです!?」 『学校には行っているんだろう?なら、別に問題ないだろう』 「……っ!あんたそれでも、親ですか!?」 どこの世界に、子どもの居場所が分からずに、のうのうとしてられる親がいるんだ。普通だったら、心配で仕方ないはずだ。俺は今にも心臓が潰れそうなほど、心の安否が心配で気が気じゃないのに。 『親になりたくてなったわけじゃない』 「……っ!!」 (なんだそれ) あまりに自分勝手すぎる言い分に、今すぐ叔父さんを殴りたくてしょうがなくなった。 「……もう良いです。俺が探しますから」 これ以上ないほどに湧く怒りをなんとか抑えて、通話を切る。怒りを向ける価値もない。今は心が優先だ。 今日は水曜日。バイトの日だったはず。時刻は21時を回っているから、まだいるかどうかは五分五分だが、心当たりがそれしかない以上、そこに行くしかない。 俺はハンドルを切り、心のバイト先のカフェへと向かった。

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