84 / 242
第84話 高谷広side
*
車を走らせながら、叔父さんに電話を掛ける。数コール後に、車のスピーカーから、めんどくさそうな声が流れた。
『なんだ』
「心は家にいますか」
『なんだ、いきなり』
「嘘つきましたよね。貴方は心に一緒に暮らそうなんて言っていない」
答えざるを得ないよう、強めの口調で問いかけると、叔父さんはため息を漏らした。
『……家にはいない』
「じゃあ、どこです?」
『知らん』
「は?居場所が分からないってことですか?なんで心配しないんです!?」
『学校には行っているんだろう?なら、別に問題ないだろう』
「……っ!あんたそれでも、親ですか!?」
どこの世界に、子どもの居場所が分からずに、のうのうとしてられる親がいるんだ。普通だったら、心配で仕方ないはずだ。俺は今にも心臓が潰れそうなほど、心の安否が心配で気が気じゃないのに。
『親になりたくてなったわけじゃない』
「……っ!!」
(なんだそれ)
あまりに自分勝手すぎる言い分に、今すぐ叔父さんを殴りたくてしょうがなくなった。
「……もう良いです。俺が探しますから」
これ以上ないほどに湧く怒りをなんとか抑えて、通話を切る。怒りを向ける価値もない。今は心が優先だ。
今日は水曜日。バイトの日だったはず。時刻は21時を回っているから、まだいるかどうかは五分五分だが、心当たりがそれしかない以上、そこに行くしかない。
俺はハンドルを切り、心のバイト先のカフェへと向かった。
ともだちにシェアしよう!