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第100話

「俺と……?」 「そうそう!望月の予定に合わせてさ……どう?」 (俺が、友達と、夏休みに遊ぶ……) 自分には馴染みがなかった言葉。中学時代、周りが楽しそうに夏休みの計画をしているのが、俺には関係ないって思いながらも、どこか羨ましかった。 だから、山田君が誘ってくれたことがすごく嬉しくて、俺は思わずはにかんでしまう。 「ありがとう……嬉しい」 嬉しい。友達と──山田君と遊びに行ける。遊びに行って良いんだ。 急に夏休みが楽しみになった単純な自分に内心苦笑しつつ、お礼を述べると、山田君は自分の手を目に当てて天を仰いだ。 「くうっ!かっっっっわいい!!」 「や、山田君……?」 いきなりの行動にびっくりして名前を呼ぶと、今度はガシッと手を握られる。山田君は、暑いからか、ほっぺが赤くなっていた。手も俺よりはるかに熱を持っている。 「マジでいっぱい二人の思い出作ろうぜ!おっ、俺も、覚悟決めっからさ!」 「覚悟?」 「おうっ。だ、だから、待っててな!」 「……?」 (山田君から、場所とか時間とか提案してくれるってことかな……?) 山田君はいつも色々リードしてくれて、本当にありがたい。 俺も手をギュッと握り返して、山田君に笑いかけた。 「うん。楽しみ」 どうしよう。ほっぺの緩みが治らない。 「……っ。あっ、やばい、やばいなんか駄目だこれ」 「山田君?」 「おっ、俺っ、トイレ行ってくる!!」 バッと立ち上がった山田君が、一目散に教室の外へ出って行ってしまい、俺は呆然とその姿を見送った。 (お腹痛くなったのかな?心配だな……)

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