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第106話
(ふぇっ……)
テーブルの下の手に触れた、俺より低い温度。
思わず漏れそうになった声をなんとか飲み込んで、俺は横をチラリと見た。
そこには穏やかに微笑んだ先生が。俺の胸はきゅうんと疼き、そのタイミングで先生がスルリと手をなぞる。
(ど、どうしよ……っ)
思わぬ先生の行動に、心臓はバクバクで頭はグルグル。
目の前には叔母さんと叔父さんと蓮君がいる。俺たちの関係はバレてはいけないのに、こんなドキドキすることされたら、隠し通せる自信がない。
(だ、だめ、です……)
不安を込めた視線を先生に送ると、先生は名残惜しそうにしながらも手を離してくれた。
俺も少し寂しい……なんて思ってしまったけど、今はそれどころじゃないと思い直す。
(顔熱い……)
この真っ赤に染まった顔を、どうやって言い訳をしようかと叔母さんと叔父さんを見ると、思わぬ会話が繰り広げられていた。
「ああん。心君、本当に可愛い。こんな息子欲しかったわぁ」
「おや、今からでも遅くないんじゃないか?」
「やぁだもう、貴方ったら~」
そこには他人が入り込めない空気があった。
(す、すごい、ラブラブ……)
他人事なのに照れてしまう俺とは違って、珍しくシラけた目をする先生と、特に表情を変えてない蓮君。
二人の様子を見るに、この家ではこれが日常なのだろう。先生のさっきの行動は、これを知っていたから行われたものなのかもしれない。
(なんか良いな……ラブラブ)
俺も先生とあんな風になれたら──と思いかけて、やっぱりやめた。
(だって俺……絶対恥ずかしくなっちゃうもん……)
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