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第170話

*  うさぎさんを抱きながら帰って行った蓮君を見送った俺は、しばらくして家に着いたという蓮君からの連絡に安心して、定時上がりの先生を待っていた。もちろん、浴衣を着たままで。  (に、似合うって言ってたけど、ほんとかな……)  そわそわうきうき。そんな浮かれた気持ちで、ちょこんとソファに座って待つ。  (早く会いたい……)  そう思った瞬間、ガチャっと扉の開く音がした。  「……!」  (帰ってきた……!)  俺は勢いよく立ち上がり、ヒラヒラと袖をなびかせて玄関に向かう。本当は走ってしまいたいくらいだったけど、そこは理性を保ち、控えめに早歩きで。  「ただいま」  「……おかえりなさい」  この瞬間が好き。会いたくて会いたくて堪らなくて。そしてやっと会えて、一気に心が満たされる瞬間。  カバンを預かり、先生の手が空くようにする。これは二人の暗黙の了解。その理由はちょっぴり恥ずかしいもの。  「……ん」  ゆっくりと塞がれる唇。毎日の習慣となった、お帰りなさいのキス。  カバンを預かるようになってからは両手で顔を包んでくれる。先生に触れられている場所が多ければ多いほど、幸せになるの。  玄関の段差では埋まらない身長差。本当は俺がつま先立ちにならなくちゃいけないのに、いつも先生が屈んでくれる。  「……はぁっ」  いつもより、ちょっぴり長かった。おでことおでこがくっつき、耳をするりと撫でられてピクッと肩が震えた。  「せんせ……」  「……可愛いなぁ」  しみじみとそう言われて、キスで熱くなったほっぺが、ますます赤く染まる。胸がきゅんきゅん苦しくて。好きで好きで堪らない。  「可愛すぎて、あの場で抱きしめたくなった」  「ほんと……?」  「ほんと」  (嬉しい……)  「心……」  恥ずかしくて目を伏せたけど、すぐに気配がして、顎をちょっとだけ上げて、そっと目を閉じた。  「んぅっ……んん、んぅ」  さっきよりも激しい愛を与えられて、ここが玄関だということを忘れ、ふにゃふにゃに蕩けてしまう。  「せん、せ……」  腰が立たなくなってしまい、先生にもたれかかる。そんな状態のときに「ソファとベッド、どっちにする?」と囁かれれば、自然と口が動いちゃうもので。俺は迷うことなくあっちを選んだ。

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