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第181話
「ちょ、山田、何してんの!?」
「うるさい!離せ!」
「やめなって!山田に勝ち目あるわけないだろ!?」
「そうだよ!相手不良だよ!?」
最初は栗原君がやったんだと思った。だけど、松野君をはじめとする皆の焦った声と、山田君の憤った声で、現状が分かってくる。
「と、戸塚君!?今の、今のって……戸塚君、手離してっ」
頑として俺の頭を抱き続ける戸塚君。何度ももがいて、やっと開けた視界。唖然とした表情で立っている栗原君。口端に血が滲む戸塚君。そしてその間に、興奮した様子の山田君がいて、今にも飛びかかりそうなのを、三人で押さえていた。
「栗原はそんな奴じゃない!栗原を侮辱すんな!」
「はっ、笑わせんなよアホ面。さっき、そいつも望月のこと侮辱してたけど?」
「何がだよ!?」
「『奪った』『か弱いふり』『最悪』って言ってたけど?これは侮辱じゃねえっての?」
「……っ」
山田君がグッと言葉に詰まる。戸塚君はそんな山田君に詰め寄り、ガッと胸ぐらを掴み、ものすごい剣幕で怒鳴りつけた。
「違うだろうが!!てめえの意思でこいつと居んのに、なんで今みたいにキレねえ!?」
「ちがっ。お、れは……」
「俺はなんだよ!?ダチだか何だか知らねえけど、守るもん間違ってんじゃねえよ!!」
「……っ」
怖くて。俺のせいで起こってしまったこの状況が怖くて。俺は戸塚君に後ろから抱きついた。それしか、自分に出来ることが見つからなかった。
「と、戸塚君っ。いいの!俺が悪いの!」
「はぁ!?お前何言って……」
「お願いだから、もうやめて!」
「……」
必死に叫ぶと、渋々といった様子で、戸塚君の身体の力が弱まった。その隙に二人の距離を離して、間に入る。俺を見つめる山田君の目は、困惑して揺れていた。
「ごめんなさい。俺、山田君に甘えてた……もう、皆の邪魔はしないから……」
「もち、づき……?」
「ごめんね、山田君」
俺は苦しい胸を押さえ、最後に「今までありがとう」と伝えた。
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