ひとまずホッとするも、なかなか山田君からの返答がない。山田君の面を食らったような顔が不安で、黙っていられなくなった俺は、コテンと首を傾げた。 　「駄目、かな……？」 　すると、山田君は泣きそうなくらい顔を歪めて、そして勢いよく抱きついてきた。 　「い、良いに決まってるだろー！！」 　「わっ」 　「本当にいいの！？無理してない！？」 　「うん。してないよ。でも、まだ皆に受け入れてもらえるかは分からないけど……」 　それでも頑張るけど。信用してもらえるように、誠心誠意頑張るつもり。それでまた駄目だったら、そのときに考えれば良い。先生がそう言ってくれた。先生にそう言ってもらえた俺は、ちょっとだけ強い。 　「そんな心配いらないから！本当は皆、望月と話したいって言ってたし！つーか、そのままの望月でいい！不快だなんて思わないから！ちょー可愛いから！」 　「で、でも……」 　（栗原君は……） 　そう思ってふと視線を彷徨わせたときだった。俺を睨む黒い瞳。 　「栗原、君……」 　「え、栗原？」 　山田君が俺から離れて振り返る。すると、栗原君は自嘲気味に口端をつり上げた。 　「良かったじゃん、仲直り出来て。これで俺はお払い箱？」 　「は？何言って……栗原も聞いてただろ？望月、皆と仲良くしたいって」 　「山田は本当にアホだね。それに俺が入ってると思う？あんなに望月君を貶した俺が、その『皆』に入ってると思うの？」 　「あ、当たり前だろ！な！？望月！」 　「う、うんっ。もちろんっ」 　山田君の問いかけにすぐに同意する。 　「あのっ、あのねっ、栗原君。俺、この性格直すように頑張るから……だから、俺、栗原君とも仲良く──」 　「するわけない。出来るわけない」 　「え……」 　「ほんと、望月君ってイライラする」 　栗原君は吐き捨てるようにそう言って、踵を返した。 　「栗原っ！」 　「待って、山田君っ」 　追いかけようとする山田君の手をとっさに掴んだ。振り返った山田君は、泣きそうな顔をしていて。俺は、そんな山田君に眉を下げて微笑んだ。 　「俺に行かせて」 　「え……でも、また望月にキツイこと言ったら……」 　「大丈夫。山田君が一番分かってるでしょ？」 　「え？」 　「山田君の友だちに、酷い人なんかいないもん」 　「……っ」 　栗原君は山田君の友だち。性格が合わないことがあっても、他人をむやみに攻撃する人なんかいるはずない。あのキツイ言葉にはなに理由があるんだって思うから。 　俺はきっと、それを受け止めなきゃ前に進めない。