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第195話

 俺はキュッと、先生の肩を掴む。  「物は、いらない、です」  「そっか」  「けど……その……」  「うん」  「ギュってして欲しい……」  恥ずかしくて伏し目がちになってしまう。すると、髪を撫でていた先生の手が背中に周り、身体を密着させるように力を込められた。  先生の体温に胸がドキドキして、身体がぴったりとくっついてるのが恥ずかしくて。だけど、もっともっと欲しくて。上目で見ると、先生はコテンと首を傾げた。  「あとは?」  その言葉に、俺の胸が跳ね上がる。  「まだ、良いの……?」  「もちろん」  「……じゃあ、あの……キス、も」  「うん」  ほっぺに片手が添えられる。そのまま唇が重なり、そして、触れただけですぐに離れていってしまった。俺はそれを追いかけるように顔を近づけてしまい、先生が小さく笑う。  「もっかい?」  「ん……もっと……」  駄々っ子のような目になっちゃったかも。それでも、もっと深いキスが今すぐに欲しかった。先生とする、あの蕩けちゃいそうになるキスが好き。  先生のカッコいい顔が再び近づいてくる。トクントクンと高鳴る胸に、どこか心地良さを覚えながら、目をゆっくりと閉じる。  「んむ……んん、ぁ……んぅ」  柔らかい、濃厚なキス。舌を絡め取られ、漏れる甘い息。次に唇が離れるころには、俺はトロトロに蕩けていて、先生の支えなしでは身体を保っていられなかった。  「気持ち良かった?」  ほっぺを撫でる先生に、コクリと頷く。息が荒くなっていたから、言葉では返事が出来なかったから。そんな俺に、先生は大人っぽい顔で微笑む。  「蕩けた顔して……可愛いね」  「んぅ……」  「ほら、あとは?心のしたいこと、なんでもするよ?」  この状況で、その答えは一つしかなくて。でも、素直に言うのはやっぱり恥ずかしくて。俺は先生の首に抱きつくように腰を上げる。そうすれば顔を見なくて済むから、ちょっとだけ、恥ずかしいのが和らぐかなって。  「あとは……先生の、したいこと……してほし……」  そう耳元で呟くと、ブワッと先生の体温が上がった気がした。それはもちろん、気のせいだと思うけれど、なんだかそんな感じがしたのだ。  「心くーん、それはちょっとズルいんじゃないですか?」  「うっ……」  (そ、そうだよね)  先生の揶揄うような声に、自分がしてしまったことの恥ずかしさを自覚する。  「ご、ごめんなさ……ひゃっ」  すぐに身体を離そうとしたけれど、その前に視界が一変し、背中はソファの柔らかな感触で包まれた。覆いかぶさる先生は、何かのスイッチが入ったような、大人の男の人の目をしている。  「嘘だよ。本当に可愛いね、心は」  「ふぇっ……あ、んっ」  耳を手でゆっくりとなぞられて、変な声が出てしまった。恥ずかしくて口を押さえるも、それに追い打ちをかけるように先生の唇が耳元に寄る。  「しばらくしてなかったし……今日はめいいっぱい可愛がらせてもらおうかな」  そしてペロッと耳たぶを舐めた先生が、「準備もあるし」と色っぽく囁いた。  「あっ……」  そうして俺は、何週間ぶりに先生にたっぷり甘やかしてもらったのだった。

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