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第194話

*  「……先生、ごめんなさい」  その晩、ソファで抱っこをされながら、今日の出来事の報告を終えた俺は、最後に深く頭を垂れた。  「ん?何が?」  きょとんとする先生。  「俺……先生に、嫌な態度いっぱいとった……」  素っ気ない話し方のになったり、大きな声を出したり。いっぱい嫌な顔をした。だから、しゅんとしていると、先生が俺の頭を慰めるようにスルリと撫でる。そして、そのまま指にクルクルと巻きつつけて遊び始めた。  「そんな態度取られた覚えないよ?」  「でも、俺……先生に子どもっぽいこと、いっぱいしちゃった……」  「言ったろ?俺には甘えて良いって」  「……でも」  「こーら。せっかく仲直りできたんだから、笑いなさい」  ムニッとほっぺをつままれ、さらに、グイッと口角を持ち上げられた。無理矢理に笑わされて、絶対変な顔してるのに、先生は俺のことを愛おしそうに見つめてくれる。  「うん。やっぱり心は笑顔の方が可愛い」  「……っ」  優しく微笑まれて、胸がときめいて堪らなくなった俺は、ギュッと大きな身体に抱きついた。大好きな香りを胸いっぱいに吸い込む。  「はは。早速、甘えんぼ?」  「うぅ……」  グリグリと頭を先生の胸に押し付ける。今の俺は多分、甘えたさんモード。先生に甘やかして褒めて欲しくて。そんな俺の心を、先生は必ず読み取ってくれる。  「頑張ったな、心。偉かったよ」  先生は俺の頭を撫でながら「頑張った」「偉い」を繰り返してくれた。それがすごく落ち着いて、嬉しくて。勇気を出して良かったって、心から思う。  「頑張った心に、ご褒美あげよっか」  髪を撫でながら、先生が優しい声色で、そんな提案をしてきた。俺はソッと顔を上げて、先生を見つめる。  「ご褒美?」  「うん。何か俺にして欲しいことある?物でもいいけど」  「でも、ご褒美なんて……そんな大層なことはしてない、ですし……」  「ちゃんと頑張っただろー?それに、俺があげたいんだから良いの」  「……」  (良いのかな……)  今回勇気を出せたのは全て先生のおかげだから、むしろ俺がお礼をしなきゃいけないのだけど。

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