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番外編 白衣④

 「ふぇっ、ちょ、まっ……」  「待てない」  「んっ」  思わず引いた身体をすかさず押さえられて、奪われた唇。突然のことで、唇をギュッと固く結んでしまったのだけど、先生に下唇を甘噛みされて、無理やりこじ開けられる。  「んぁっ……ん……っ」  (舌の裏、だめぇ……)  口腔を貪る柔らかい感触は、的確に俺の好きなところを攻めてくる。その度に、身体はビクビクと震え、快感に目が細まった。  「は……心……」  何度も角度を変えて重ねられる。その合間に、名前を呼んでもらえるのが、すごく嬉しい。  「んんっ……せんせっ……」  「ん……しーん、こういうときは何て言うんだっけ?」  唇から離れた口が耳元に寄る。酷く色っぽい声が耳の奥に響き、頭が蕩けてしまいそう。  「あ……ひろ、く……」  「うん。正解」  まわらない口でなんとか名前を呼べば、ご褒美だと言わんばかりに耳を舐め上げられる。  「んんぅっ……やぁ、耳だめぇ……っ」  耳元でクチュクチュと厭らしい水音が鳴るたびに、身体が震える。自然と下半身が疼いてしまい、俺は無意識に腰を揺らした。  「腰、揺れてる……」  先生の手がお尻へと伸び、二、三度揉まれてしまう。  「あっ、あぅ……っ」  「心、細いから、このまま手入っちゃうな……」  先生の綺麗な手が、ジーンズの隙間から侵入して尾骨をたどろうとしたとき、俺は慌てて先生の胸を押しやった。  「やっ、まって……っ」  「まだその気になれない?」  「ちがっ……」  先生に誘われた時点で、その気にはなってる。だって、先生とのえっちは大好きだから。  (だけど──)  「違うけどっ、俺っ、お風呂っ」  「風呂?」  「お風呂、入ってないっ」  先生はクラクラしそうなほどいい匂いを、プンプン漂わせているけれど、俺はまだお風呂に入っていない。涼しい季節になったといえども、丸一日綺麗にしていない身体では、この先の行為に及ぶのははばかられた。  (それに……)  中だって、まだ綺麗にしてない。いや……実は、先生が仕事から帰って来る前にトイレでちょっとだけ洗ったけど、万が一があったら困るし、やっぱりお風呂でちゃんと洗っておきたい。  「俺は気にしないよ」  「お、俺が気にしますっ」  いくら先生が相手でも、ここは譲れない。そんな強い気持ちを持っていたはずなんだけど。  「んあっ⁉︎」

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