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番外編 白衣⑦

 「うぅ……乾かないよぉっ」  翌朝。俺は涙目になりながら、昨日汚してしまった白衣にドライヤーを当てていた。終わった後すぐに洗濯したものの、朝になっても乾ききっておらず、この有様。  (うぅ……どうしようっ)  「しーん。あとは俺がやるから、学校行っといで」  ひょいっとドライヤーを奪われ、俺は慌てて手を伸ばす。  「でもっ、俺のせいなのにっ」  「心のせいなわけないだろー」  カチッとスイッチを止めた先生が、いたずらな笑顔を浮かべた。  「二人の責任だろ?」  その言葉で、昨晩のことを思い出してしまった俺は、ボボッと顔を赤らめた。ほっぺに手を当てて恥ずかしがる俺の頭を、先生がヨシヨシと撫でる。  「俺は嬉しかったよ」  「ふぇ?」  「独占欲みたいなの?嬉しかった」  「あ……」  「でも、俺は心のものなので安心してください」  「うぅ……」  (どうしよ……嬉しすぎる)  「ほら、もう行きな。また学校でな」  チュッとおでこに落ちてきた唇。  「……いってきます」  「ん、いってらっしゃい」  「けど……」  (唇に欲しい……)  いってきますのキスは唇に。贅沢になってしまった俺は、もうおでこだけじゃ足りないの。  「ん?……あぁ」  俺の気持ちに気付いてくれた先生が、俺のほっぺに手を当てて顔を近づけてくる。  (幸せ……)  じわーっと広がる幸福感に浸りながら、俺は目を瞑ったのだった。 白衣 《終》

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