239 / 242
13
でも、あえてみんなには秘密にしようとしてくれてるんだなって。やっぱり栗原君は良い人だなって。そう思っていた。
(だけど、本当に気づいてなかったんだ……)
そんな、まさかの事実にびっくりする。
(栗原君ってちょっぴり天然さんだな)
失礼ながらもそんなことを思ってしまう。そして、その考えは、どうやらみんなも同じだったようで。
「栗原そういうとこあるよねぇ」
「変なとこで鈍感なとこなー」
「うるさいよ!」
顔を赤く染めた栗原君が二人を睨む。だけど、愛知君も内山君も、ただケラケラと笑うだけだった。
(みんな、男同士でも引いたりしないんだ……)
たぶん栗原君は山田君への気持ちを隠しているから、みんなにとって俺みたいなのは新鮮だと思うのに、普通に受け入れてくれてる。
それが嬉しくて、あったかくて。ちょっとジーンとしていると、いつのまにか栗原君の怒りの矛先は俺へと戻って、数ヶ月前のようにギロッと睨まれてしまった。
「相手誰⁉︎」
「え、そ、それは、ちょっと……」
今はもう栗原君のことは怖くないけど、俺はスーッと目を逸らす。だって、相手は俺たちの担任の先生だなんて、絶対に言えるわけがないから。
すると、向かいに座る内山君が嬉々として口を挟んできた。
「あれじゃねえの?ほらあの、栗原にボロクソ言った、赤髪のイケメン不良」
「ふぇっ⁉︎」
(赤髪って、戸塚君のこと⁉︎)
あまりに驚きすぎて、開いた口が塞がらない。ありえなさすぎて言葉が出なかっただけなのに、困ったことに、みんなはそんな俺の反応を肯定と受け取ってしまった。
「は⁉︎あいつだったの⁉︎」
「そうでしょー。あんな風にもっちーのこと守っちゃってさぁ。もっちー愛されてるぅ」
愛知君にほっぺをツンツン突かれて、ハッと我に返った俺は、慌てて首をブンブンと振る。
「ち、ちがっ!戸塚君はっ……」
「戸塚君ねぇ」
「いつから付き合ってんのか知らねえけど、彼氏を名字呼びとか、恥ずかしがり屋のもっちーっぽいな!」
「あのね内山君っ、そうじゃなくてっ」
「つーか、あんな不良とどこで知り合ったんだ?もっちーにとって、一番避けたい人種じゃねえ?」
「カツアゲから恋が始まったんじゃなぁい?」
「愛知君⁉︎」
ともだちにシェアしよう!