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 でも、あえてみんなには秘密にしようとしてくれてるんだなって。やっぱり栗原君は良い人だなって。そう思っていた。  (だけど、本当に気づいてなかったんだ……)  そんな、まさかの事実にびっくりする。  (栗原君ってちょっぴり天然さんだな)  失礼ながらもそんなことを思ってしまう。そして、その考えは、どうやらみんなも同じだったようで。  「栗原そういうとこあるよねぇ」  「変なとこで鈍感なとこなー」  「うるさいよ!」  顔を赤く染めた栗原君が二人を睨む。だけど、愛知君も内山君も、ただケラケラと笑うだけだった。  (みんな、男同士でも引いたりしないんだ……)  たぶん栗原君は山田君への気持ちを隠しているから、みんなにとって俺みたいなのは新鮮だと思うのに、普通に受け入れてくれてる。  それが嬉しくて、あったかくて。ちょっとジーンとしていると、いつのまにか栗原君の怒りの矛先は俺へと戻って、数ヶ月前のようにギロッと睨まれてしまった。  「相手誰⁉︎」  「え、そ、それは、ちょっと……」  今はもう栗原君のことは怖くないけど、俺はスーッと目を逸らす。だって、相手は俺たちの担任の先生だなんて、絶対に言えるわけがないから。  すると、向かいに座る内山君が嬉々として口を挟んできた。  「あれじゃねえの?ほらあの、栗原にボロクソ言った、赤髪のイケメン不良」  「ふぇっ⁉︎」  (赤髪って、戸塚君のこと⁉︎)  あまりに驚きすぎて、開いた口が塞がらない。ありえなさすぎて言葉が出なかっただけなのに、困ったことに、みんなはそんな俺の反応を肯定と受け取ってしまった。  「は⁉︎あいつだったの⁉︎」  「そうでしょー。あんな風にもっちーのこと守っちゃってさぁ。もっちー愛されてるぅ」  愛知君にほっぺをツンツン突かれて、ハッと我に返った俺は、慌てて首をブンブンと振る。  「ち、ちがっ!戸塚君はっ……」  「戸塚君ねぇ」  「いつから付き合ってんのか知らねえけど、彼氏を名字呼びとか、恥ずかしがり屋のもっちーっぽいな!」  「あのね内山君っ、そうじゃなくてっ」  「つーか、あんな不良とどこで知り合ったんだ?もっちーにとって、一番避けたい人種じゃねえ?」  「カツアゲから恋が始まったんじゃなぁい?」  「愛知君⁉︎」

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