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「あんまり恋人に裸見せてると、すぐ飽きられるんだってぇ」
お昼休み。
愛知君のその言葉に、俺は口元まで運んでいたウインナーをポトリと落としてしまった。
「ちょっと、愛知。望月君相手になんてこと言ってんの」
隣に座ってた栗原君が、唖然とする俺の代わりにウインナーを拾ってくれて、ため息をひとつ吐く。
「ていうか、それ女の話でしょ。望月君は男なんだから、むしろ飽きる側なんじゃ……や、でも、望月君はそんなことしないでしょ」
「え、もっちーセックスしねえの?」
「ふぇっ⁉︎」
つい過剰反応してしまい、ぼぼっと赤くなった俺を見て、内山君は「してるんじゃん」とニヤニヤし始めた。そんな内山君に、俺は慌ててかぶりを振る。
「いやっ、あのっ……そ、そんなに、は」
「ちょっとだけ?」
「い、いや、どうなんだろ……最近はそれどころじゃ……」
(先生が忙しすぎて、最近はあんまり出来てないんだよね……)
「って、ちがっ!」
(なんで真剣に答えちゃうのっ、俺!)
案の定、みんながニヤニヤと俺を見つめている。俺は恥ずかしすぎて、まさに穴があったら入りたい気分だった。
「望月君、素直すぎ。でも、してるんだ。望月君がリードしてるの想像できない……ていうか、乗られてるのしか想像できない……」
「も、もうっ!栗原君!この話やめようよっ!」
意外にもこういう話にノリノリな栗原君。涙目になりながら懇願すると、苦笑した栗原君が「ごめんごめん」と頭を撫でてくれた。これでやっと、この話はお終いになると思ったのだけど。
「栗原、鈍感かよぉ」
向かいの愛知君がニタァと口端をつりあげる。
「こんなに可愛いもっちーに彼女がいるわけないでしょ」
「は?え、それって……」
「カ・レ・シ。そうでしょ?もっちー」
「え、あ、う、うん……」
(やっぱり気付いてたんだ……)
なんとなくそう思ってはいたけど、改めてバレていたと分かると、なんとも言えない恥ずかしさがこみ上げてくる。うんうんと頷く内山君の様子を見るに、多分みんなに気付かれていたのだろう。
でもただ一人、栗原君だけはきょとんとした表情を浮かべていて。そして、その数秒後にカッと目を見開いた。
「はあああああ⁉︎」
すぐ隣から聞こえた大声に、ビクッと肩を震わせる。でも栗原君はそんな俺のことなんか御構い無しに、ガクガクと肩を揺すってきた。
「ちょっと!聞いてないけど⁉︎そういうことは早く言いなよ!一人だけ彼女のていで話してた俺が馬鹿みたいでしょ!」
「え、で、でも、栗原君、俺と山田君のこと誤解してたから、俺が男の人のことを好きだって気づいてるのかと……」
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