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第46話
てっきりこんな些細なことではしゃぐ僕に呆れているかと思ったのに、白金君はにこにこ笑ってタオルを眺めていた。そして僕がぽかんとしていることに気が付くと、不思議そうに首を傾げる。
「ん?どうかした?」
「あ、い、いえ……。あ、あの、これ、真帆ちゃんのプレゼント用に買ってきます。この間おいしいホットミルクを作ってもらったお礼も兼ねて。」
「いいの?嬉しいなぁ。あいつもすごく喜ぶと思うよ。」
白金君はやっぱり不思議な人だ。白金君といると、僕までちょっとだけ心が強くなれる気がする。自分でも嫌になる「僕」という人間を、白金君は嫌な顔一つに受け止めてくれる。それも、そんなことしたって白金君にはなんの得もないにも関わらずなのに。
真帆ちゃんへのプレゼントを無事用意できた僕は、次に白金君の用事であるCDショップに向かった。白金君は新譜紹介コーナーにまっすぐ向かい、棚に並んだCDを順番に確認しだす。
僕はその隣に立って、シルバーリングがはめられたすらりと長い指がCDケースの上を蝶が飛ぶみたいに移動していく様子を見つめていた。
―――すごく凝ったデザインの指輪……アーマーリングっていうんだっけ?。
ピアスとかシルバーリングとか、白金君が身に着けているものはどれも尖ったデザイのものばかりだけど、右手の薬指に二つ重ねてる銀色の指輪だけはシンプルなんだよなぁ。
そういえば、このシンプルな指輪だけはいつもつけてる気がする。
お気に入りなのかな?
それとも何か思い入れがあるとか?
じっと白金君の手を見ていたせいだろか。白金君はぴたりと手を止め、僕の顔を覗き込んできた。僕は急に近づいてきた白金君の顔にびっくりして、後ろにのけぞる。
「っ、な、なんでしょう?!」
「いやー、嵐山が俺の手ずっと見てるから気になっちゃって。」
「あ、す、すいません!その、アクセサリーすごいなって思って……。」
「そう?」
「は、はい。なんていうか、戦闘力が高そうです。」
「あはは!戦闘力!面白いこと言うね!」
けらけら笑いながら自分の指を眺めていた白金君は右手の薬指の指輪に触れ、それから再びCDに手を伸ばした。
「たしかに、俺ごついアクセサリーが好きかも。啓一は指とか手首には絶対つけないんだけどね。その代わり顔にピアス開けてるけど。」
「眉毛の上のですよね?」
「そうそう。あれ中学二年生の時に開けてさぁ。さすがに先生に呼び出されてたよ。『なにか悩みでもあるのか』って。」
「そこで叱られるんじゃなくて心配されるところが、さすが蒼秀学園って感じがします。」
「うちの学校は自由だからね~。あ、これこれ。」
どうやら目当てのCDが見つかったみたいだ。CDジャケットは抽象画のようで、まるで美術書のような見た目をしている。
―――どんなアーティストなんだろう?
まじまじとCDを眺めていると、白金君が僕に教えてくれた。
「このバンド、ドイツのバンドなんだよ。」
「ドイツ?じゃあドイツ語の歌なんですか?」
「英語の歌とドイツ語の歌半々かな。たしか俺たちと年齢が近かったはず。ボーカルが十九で、一番若いメンバーは十八とか。」
「すごい、それでCD出してるんですか?」
「それも、これは二枚目のアルバム。そうだ、前のアルバムの曲聞いてみる?」
そう言った白金君はバッグの中から音楽プレイヤーを引っ張り出し、僕に片方のイヤホンを差し出した。そしてもう片方のイヤホンを自分の耳にはめ、プレイヤーを操作し始める。
―――え、こ、これ、イヤホンはんぶんこするの?!
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