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第23話

 唐突に背後からかけられた声に体が竦む。振り返るまでもない。僕はその声と気配をよく知っていた。 ―――なんでここに梅田君が……?  声の主は僕を率先して虐めている隣のクラスの梅田君だ。振り向けば間違いなく絡まれる。でも振り向かなくても絡まれる。なにをしようとだめだ。 ―――だ、だけどここは学校じゃない。 人通りの多いショッピングモールの中だ。 いくら梅田君だって出会いがしらに殴ったりはできないはず。  そう思って体を震わせながら振り返ると、梅田君が不機嫌そうに片眉をつり上げた僕を見下ろしていた。 「さっさと返事しろよ、このホモ野郎。」 「っ、ご、ごめんなさい、」 「うっせえ。キモいから喋んな。」 「っ……。」  天然パーマと偽って緩いパーマをかけている梅田君は、真面目で従順な生徒が多いうちの学校の中では目立つ存在だ。いわゆるスクールカーストの最上位にいると言ってもいい。  そんな梅田君からすると、最下層にいる僕はとにかく存在しているだけでも気に入らないらしく、彼からのいわれのない暴力はしょっちゅうだった。  梅田君は僕の周りをきょろきょろと見回し、警戒心を滲ませて尋ねてくる。 「おい、お前あの蒼秀学園のヤバいヤツと一緒なのかよ。」 「し、白金君のこと?一緒だけど、今白金君は電話をしにいってて……。」 「ふーん、じゃあ、今はお前一人なんだ?」 ニヤリと残忍な笑顔を浮かべ、梅田君が僕の首根っこを掴む。 「い、痛い!」 「うるせえよ!デカイ声出したらただじゃおかねえから。ちょっと顔貸せ。」 「や、やだ、」 「うるせえって言ってんだろ。」  抵抗する僕を強引にトイレに引っ張っていった梅田君は、僕のことを力任せに個室に放り込んだ。そして自分も入って後ろ手に鍵を閉める。狭い空間に二人きり。今までのことがフラッシュバックして冷たい汗がだらだらと溢れてくる。  怯える僕の顔を眺めて嘲るような表情を浮かべ、梅田君はまずこう聞いてきた。 「あの蒼秀学園のやつとお前、どういう関係?」 「と、友達……。」 勇気を振り絞って答えると、梅田君の表情が一瞬固まる。 「はあ?友達?」 「そ、そうだよ。友達。」  もう一度、今度はさっきよりもはっきりと答えた。すると梅田君は眉間に皺を寄せて僕の胸倉をつかむ。 「お前、昨日あいつに『犯してください』ってお願いしに行ったんだったよなぁ?」 「そ、そうだけど、でも……。」 「でも?なにが『でも』だよ。一人前の口聞いてんじゃねえぞ、ホモ野郎。」  そう言うや否や、梅田君は僕の体をひっくり返すようにして後ろを向かせた。 ―――これ……、まさか。  この体勢に覚えがあった僕は、慌てて抵抗する。 「や、やだよ!こんなところでしたくない!やめて!」 「黙れ。」  梅田君のその言葉の直後、背中に強い衝撃が走った。たぶん肘鉄を入れられたのだ。背後からの強烈な一撃は気道を塞ぎ、僕は息を吸うのもままならなくなって激しく咳き込む。  僕が抵抗できなくなったのをいいことに、梅田君は勝手に僕のベルトを外し、下着ごと制服のズボンを引きずり下ろした。便器の蓋に膝をついてお尻を突き出す恰好になった僕に、梅田君が後ろから寄り掛かってきて、耳元で囁いた。 「お前は俺たちの『便器』をやってればいいんだよ。」 ―――怖い 怖い 怖い いやだ いやだ いやだ  ぎゅっと目をつぶってがたがた震える僕の腰に、梅田君の冷たい手が触れる。白金君の温かくて優しい手とは正反対の乱暴で自分勝手な手は、何の前触れもなくお尻を鷲掴みにして、硬く閉じている場所を露わにさせた。 「や、やめて……!」 「はあ?ここ、ひくつかせといて『やめて』?」 せせら笑った梅田君の指は、閉じたままの蕾を強引に押し広げ、好き勝手に侵入してきた。 「痛っ!!いたいよ……!」 潤滑剤もなにもつけていない指を無理矢理押し込まれれば当然痛い。引き攣るような痛みと異物感に対し、体中から脂汗が噴き出す。 「ホモがいっちょまえに痛いとか、ほんと図々しい。」 吐き捨てるような言葉の後、背後で鞄の中をごそごそと探るような音と、何かのキャップを開けるパチンという音が聞こえてくる。そして身構えてもいないところに冷たいものが垂らされた。 「ひっ!」 「いちいちうるせえ。わざわざローション使ってやってんだから、おとなしくしてろ。」 「っ、やだ、ぁ……!!」

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