8 / 8
第8話
典夫にお姫様抱っこされながらお風呂場に向かいつつ、知矢は言った。
「ねー、お父さんとお母さん、帰ってきたらどうしよう?」
「大丈夫だろ。伯母さん家に行ってるから、きっと遅くなるはずだよ」
「今、このシーン見られたら、言い訳できないね?」
「そのときはちゃんと言うさ」
「え? な、なんて?」
「知矢をオレにくださいって」
「も、もうお兄ちゃんてば……」
知矢は兄が冗談を言っているのだと思った。だが。
「オレ、本気だよ、知矢。それくらいの覚悟はできてるから」
「お兄ちゃん……」
知矢は兄の胸の顔を押し付け、にじんでくる涙とともに応えた。
「……うれしい……」
典夫と知矢はじゃれ合いながらお風呂に入った。
「小さい頃もよく一緒に風呂に入ったよな。憶えてるか?」
「うん……。だって僕は物心ついたときから、お兄ちゃんが好きで好きでたまらなかったんだもん……」
「知矢……」
シャワーの雨の中、二人は長い長いキスを交わした……。
ともだちにシェアしよう!