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第8話

 典夫にお姫様抱っこされながらお風呂場に向かいつつ、知矢は言った。 「ねー、お父さんとお母さん、帰ってきたらどうしよう?」 「大丈夫だろ。伯母さん家に行ってるから、きっと遅くなるはずだよ」 「今、このシーン見られたら、言い訳できないね?」 「そのときはちゃんと言うさ」 「え? な、なんて?」 「知矢をオレにくださいって」 「も、もうお兄ちゃんてば……」  知矢は兄が冗談を言っているのだと思った。だが。 「オレ、本気だよ、知矢。それくらいの覚悟はできてるから」 「お兄ちゃん……」  知矢は兄の胸の顔を押し付け、にじんでくる涙とともに応えた。 「……うれしい……」  典夫と知矢はじゃれ合いながらお風呂に入った。 「小さい頃もよく一緒に風呂に入ったよな。憶えてるか?」 「うん……。だって僕は物心ついたときから、お兄ちゃんが好きで好きでたまらなかったんだもん……」 「知矢……」  シャワーの雨の中、二人は長い長いキスを交わした……。

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