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第9話
***
あ、怖い、怖い。
「っ、は、怖い…菊池っ」
「怖い?…でも、お前が選んだんだろ。我慢しないとな。」
「ぁ、あ…あぁぁっ!」
後孔をグリグリと菊池の指で弄られる。体がビクビクと震えて、シーツを強く掴んだ。
「ほら、もう挿れんぞ」
「あっ、あ、ま、って…待って、菊池っ」
「待てないな。金を貰うならそんな事言えねえんだよ。わかるか?」
「はぅ、ぁ…ごめ、なさい…ごめんっ」
謝ると、菊池は強ばらせていた顔を少し和らげる。そうして俺の両足をそれぞれの腕で抱えた。
「初めから、俺に言えばよかったのに」
「え…───ッッ!!」
大きな質量が中に入ってきて、目を見開き背中を反らした。内臓が押し上げられるような感じ。初めて味わうそれに、今すぐ気絶してしまいたいとすら思った。
「あ、あぁっ、や、め…ッ」
「これをさっきの野郎とするつもりだったのか?」
「い、やだぁっ、あ!ゆ、るして、ゆるしてぇ…!」
足をバタバタして暴れる。けれど菊池にキスをされて、奥までペニスが入ってきた事で動きは止まり、体にはゾクゾクと表現できないような感覚が走り抜け、気が付けば射精していた。
「はっ、後ろだけでイけたんだな。素質あるよ、お前。」
「は、ぅ…ぅ、あ…」
回らない頭で、菊池の言った言葉の意味を必死に考えた。そうして行き着いた答え。もし本当に素質があるなら、これはいい商売になる。
汗で額に張り付いた髪を退けてくれる菊池の手を、パシっと掴んだ。
「素質、あるの…っ?」
「…ああ、あるよ。」
「お、俺の体っ、1回、いくらで買ってくれる…?」
菊池は眉を寄せた。けれど、俺はいい商売が見つかったと、嬉しくて堪らないんだ。
「…いくらがいいんだ。」
「っ、は、1回で、5万は…?高いっ?」
さっき体を走り抜けた感覚は気持ちよかったと思う。これを感じながら金を稼げるなら万々歳だ。
「いや、俺にとっちゃ安いくらいだな。…けど、俺が金を払う条件は、お前の援交相手を俺だけにすることだ。」
「…っ、ん、わかった、わかったからぁ、動いて…!」
さっきまで苦しいとしか思わなかったのに、菊池のペニスを全て後孔に受け入れた途端、それは無くなった。
快感を知ったからだろうか。
確かに、この快感を知ってしまえばハマってしまう。まるで麻薬だ。
もっと欲しい。味わったことのない快感が。そして晴麗を育てることの出来る金が。
「ふっ、ぅ、菊池も、気持ちいい…っ?」
「ああ。気持ちいいよ。」
小さく笑って俺に顔を寄せ、また口を開いた。
「お前は本当、駄目な人間だな」
ついつい、笑った。目尻からは涙が零れる。
俺は元から駄目だったから、もう何でもいい。
そして、この金が、どれだけ汚くてもいい。
晴麗と生きていけるなら、俺はどれだけ汚れても構わない。
〜fin〜
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