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第1話
出稼ぎに行くと言って出ていったバカな恋人が帰ってきました。それも、推定0歳児の赤ん坊を連れて。
「蒼汰!頼む、ママになってくれ!」
「あだっ!」
バカな恋人、時雨の言葉に合わせて赤ん坊が手をあげてよろしく頼む!的なことを伝えてきた。え?なにこの赤ん坊は、時雨が浮気をした成れの果てなのか。いや違う。こいつ、生粋のゲイだからそれはないか。だったらまたこいつ、友達のゴタゴタに首を突っ込んだな。
でも、それが時雨のいいところだ。バカだけど。そんなとこも俺は好きで受け入れた。
それにだ。よく考えたら、産まれた赤ん坊に罪はない。ただこいつは、大人のエゴで産まれただけだ。そしてそれを連れて帰ってきたこいつも、俺的には悪くない。だったらあとは俺が腹をくくるだけ。
大学生で、女の子と付き合った経験は平凡なためもちろんなし。童貞を貰われる前に、処女を時雨に奪われた俺にママが務まるとは到底思えない。
「蒼汰?」
「だ?」
俺が応えるのを恐る恐る待っている時雨と赤ん坊。よし、そろそろ安心させてやるか。
「時雨と、それから赤ん坊。安心しろ。俺がママになってやる。ママが務まるとは思えないが、精一杯頑張ってやる」
俺の言葉に、時雨はみるみるうちに笑顔になって。赤ん坊の方は何が何だか分かんないようだが、とにかく笑っていた。
よし、腹もくくったことだし。明日にでもからのクラブの本を買いにいかなければ。
「やったな坊主!でも、蒼汰のおっぱいと母乳は俺のだからな!」
「母乳は出ないから、時雨。それと俺のおっぱいは俺のだ」
心配するな赤ん坊。時雨みたいにバカには育てないから、安心しろ。
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