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第8話

女の人は、そのまま何も言わず帰っていった。もしかしたら弁護士とかを連れてまた来るかもしれないが、どうでもよかった。 今ここに、時雨と光と俺と3人でいる。それだけで十分だった。 「蒼汰」 「ん?」 「ありがとう。いろいろと、」 俺に抱かれながら眠る光の頭を撫でて、時雨がお礼を言ってきた。俺は何もお礼を言われるようなことはしていない。だから首を横に振れば、時雨に笑われた。 「でも、蒼汰があそこまで光を大切に思ってるとはな」 「そりゃあ、育ててますから。大変だけど愛おしいよ。時雨もそうだろ?」 「そうだけどさぁ。そこまで蒼汰の光への愛が強いとか、ちょっと嫉妬しちゃう。俺にもその愛情向けてよ」 「子供に嫉妬すんのかよ」 笑ってやれば、時雨がちょっとだけ拗ねた。確かに最近、光に構いっぱなしで時雨の相手をしていなかったっけ。 今日ぐらいは、光よりも時雨を優先するのがいいかもしれない。でもそれは、光が起きるまでだけど。 「時雨」 「なに?」 「今から光、ベビーベッドに寝かせてくるから。だから、」 いっぱい大好きって言って。 それから、キスもいっぱいしてほしい。 時雨が俺を愛してくれてるって、いっぱい感じさせてほしい。 それから―――――。 「愛してる」 END

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