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第1話 再会はドタバタ?
「ん…やぁっ!りっちゃん、そこ…やだぁっ…」
なんで…
「こぉら裕太。俺のこと、なんて言うんだっけ…?」
なんで……
「あ、あぁっ…お、兄ちゃ…んっ」
「そ、いい子だな…」
なんでこうなったーーーー!!?
数日前___
「ふぁ…いい朝だな~」
僕の名前は羽柴裕太。
今日から晴れて高校生になった。
そして、僕の行く高校、鈴乃音高校には、僕の幼馴染みの神木律がいる。
りっちゃんは、僕より2つ上の高校3年生。メガネ。
家が近所で、小さい頃はよく遊んでくれてたから、りっちゃんは僕のお兄ちゃん的存在だった。
真面目で頭もよくて、りっちゃんはよく、僕に勉強を教えてくれた。
って言っても、最近は全然会ってなくて、僕がこの高校に来たのも、りっちゃんがいるからなんだけど…。
「会えるかな、りっちゃん」
久しぶりに会いたいな。
元気にしてるかな?
だけど、このときの僕はまだ知らなかった。
りっちゃんと、あんなことになるなんて__!
キーンコーンカーンコーン__
「だめだ!全然会えない!」
放課後、りっちゃん探し。
この学校、ちょっと広すぎ!
そりゃ頭のいい名門高校だから、当然お金も持ってるだろうけどさ。
こんなんじゃ!りっちゃん見つけれる自信がないよ!
だって、りっちゃんのクラス知らないし。
こんな地味でメガネの僕が話しかけたって、きっと誰も相手にしてくれない。
あぁ、幸先悪いなぁ。
「…っと、わぁ!」
あわわわわ、人とぶつかってしまったぁぁぁ。
そして、こけた。
「ご、ごめんなさい!」
「ええ!?なんで君が謝るの。こっちこそごめん、ちゃんと前見てなくてさ。立てる?」
手を差しのべられた。
な、なんて優しいんだ。
「あ、はい……。ありがとうございます」
手をとって、立ちあがる。
なるべく目を合わせないように、顔を見ないようにしてたのに、逆に覗きこまれた。
「…!」
うわ、大きな目。綺麗な茶色だ。
髪も同じくらい…って、何見てんだ僕!失礼だろ!
「君、新入生だよね?どこか行きたいの?それとも、誰か探してる?」
先輩らしき人は優しく話しかけてくれた。
「あ、えっと…」
うおおい、チャンスだろ僕!
こんなところで、人見知りスイッチ入んないでえぇぇ!
「あ、の…」
「うん」
「りっちゃ…、神木律先輩を、探してて…」
ああ、言えた…。よかった。
「あー律?なに、知り合い?」
「……幼馴染みで」
先輩は興味深々、といった感じだ。
「ほー、これはまた。律なら、ほらあそこ」
先輩が指をさした先には
「図書室、ですか?」
そっか。りっちゃん、本好きだったもんな。
「そそ、今日は生徒会でいないと思うけど。放課後はいつも図書室。明日行ってみなよ」
生徒会……入ってるんだ。
やっぱりすごいな、りっちゃんは。
「…ありがとうございます。あの、あなたは…」
親切だし人当たりもいい人だから、名前くらい覚えておこう。
「俺は律と同じ3年の、梶蓮真。よろしくな、羽柴くん」
あれ、名前……?
「んじゃ、またね~」
「あ、はい…ありがとうございました…」
僕、名前教えたっけ?
「……」
まあいっか。
りっちゃんが放課後、どこにいるのか分かったし。それに生徒会にも入ってるって知れた。
あと、優しかった先輩……梶、先輩だっけ。
優しい先輩とも知り合えたし。
入ったばっかで不安だったけど、ちょっと楽になったかな。
「りっちゃん…」
やっと会えるね。
早く明日にならないかな~。
そして、翌日__
放課後。
梶先輩に教えてもらったとうり、図書室にやってきた。
「うわ、広…」
一体何冊本があるんだ。
何百?何千?
図書室じゃなくて、図書館レベルでしょ、これ。
「おお」
しかも、見たことない重厚感のある本ばかり。
これは……りっちゃん好きそうだな。
ほえ~、と、肝心の目的も忘れ、図書室内をぶらぶらと歩きまわっていると。
「っいて!」
誰かにぶつかり、どてっと転ぶ。
あれ?昨日も人とぶつかったのに、ドジだよなぁ、僕。
「ごめんなさい、僕、前見てなくて……」
謝ろうと顔を上げると、どこか懐かしい顔。メガネ。
「…ああ、いや、こっちこそごめ」
「りっちゃん!!」
会えた……。
りっちゃんだ、絶対りっちゃんだ!
このメガネはりっちゃん!
「……え?」
りっちゃんは、何がなんだか分かっていない様子。というか、めっちゃ嫌そうな顔。
「僕のこと、覚えてる?裕太だよ、お兄ちゃん!」
お兄ちゃん、という声に反応するように、りっちゃんの目が見開かれた。
驚いた時に、顎に手を当てる仕種。
綺麗な黒髪。大きな黒目。
背は少し伸びたけど、やっぱりりっちゃんだとすぐに分かる。
「お前……裕太?羽柴裕太か?」
「うん!」
りっちゃん、僕のこと覚えて…
「ああ、あのドジでバカな裕太か…!」
覚えて…?
「うん?」
「思い出した。ここに入ったんだな、高校」
「えっと…そうなんだよ」
りっちゃんに会いたくてね。
近所なのに全然全く会えないし。
「…あれ、裕太。お前眼鏡かけてたんだ。目ぇ悪いの?」
「へっ!?」
突然触れられ、ビクッとなる。
顔が熱い。絶対赤い!
恥ずかしいなぁ、もう。
「えっと、そこまで悪くないんだけど…」
りっちゃんの真似してみた、なんて死んでも言えないね。
「ふーん。まあ俺、2組だから、困ったらいつでもおいで」
頭にぽんっと手が乗せられ、優しく頭を撫でられる。
うわぁぁぁ…
この感じ、めちゃくちゃ懐かしい…
「ありがとう、お兄ちゃん」
めちゃくちゃ嬉しくて、たぶん今、最大限に顔緩みまくってる。
「……裕太」
頭を撫でてくれている手が、ピタリと止まる。
「ん、なに?」
すると、りっちゃんの顔が近くに。
「え、りっちゃん…近」
ちゅっ
そう音を立てて、りっちゃんが離れた。
今、え?
せっぷん?
口に……き、きすされた!?
「…その顔、俺以外に見せちゃ駄目だからな」
「……へ?」
りっちゃん自身も、自分の言ったことと、したことに驚いている様子。
僕もびっくり。
めちゃくちゃびっくり。
「…とにかく、今日はもう帰りなさい」
「……うん」
帰されてしまった……。
とぼとぼ、帰り道。
せっかくりっちゃんと久々の再開だったのに。
もうちょっとお話したかったのに。
「……はぁ」
あー、家に着いてしまった…。
というか、りっちゃんと一緒に帰ればよかったんじゃね?
僕のばか!
「ただいまぁ……」
「あら、おかえり。りっちゃんとは会えた?」
母さん、傷口開いちゃったじゃん。余計に。
「会えたけど、少ししか…」
「そう、残念だったわねぇ。あんた、小さい頃は、りっちゃんにべったりだったから」
「…うぅ」
それよりも、今は頭の整理をしないと……。
こうして、無事にりっちゃんと再開を果たした僕。
再開して、嬉しくて、キスされて、驚いて。
なんか、この先が、ちょっと不安?かもね。
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