1 / 62
1-1
『五日間、僕にちょうだい』
特に親しいわけでもない同じ学部の千田 がそう言って差し出してきたコンビニコーヒー。
それを受け取り口をつけた数分後、三園 は意識を手放した。
ジャラ…!
気づけば見知らぬ部屋。
その一角に置かれたパイプベッドの上で目を覚ました。
持ち上げた左手が硬質な音を立てる。
ボーッとする頭で左手首から伸びたそれを見つめた。
「…んだよ、これ…」
それほど太くは無いが、到底引きちぎれるとは思えない鎖。
その先は……
「おはよう。よく眠ってたね。」
聞こえてきた声は、鎖が伸びていた方向と同じ。
「……………」
「喉乾いてない?水のむ?」
鎖伝いに視線を向ければ、爽やかな笑顔と柔らかい声の持ち主…千田が座っていて。
ミネラルウォーターをちらつかせる右手首には、伸びた鎖が繋がっていた。
ともだちにシェアしよう!