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生きる意味
生きる意味が分からなかった
なんで俺は息をしているのか
なんで俺は心臓が動いてるのか
理由が欲しかった
生きていく理由が………………
俺はハッと目を覚ます
ここは… ?
俺はあたりを見渡す
何処?
ゆっくりと体を起こし更に部屋の中を見渡す
「起きたか?」
その声にビクッと体が震える
声の主は枕元の椅子に座っていた黒髪の男性らしい
なんで気付かなかったんだろ…
「は…はい……」
俺は混乱しつつもなんとか声を出して返事をする
すると彼は立ち上がり俺の服のジャージのジッパーをいきなり下ろし始める
「え,や,なんですか!?」
俺は顔を真っ赤にしてあたふたする
いきなりなんだ,この人は!?
「ふん…」
下ろしきった服を微かに開けて彼は俺の体に巻き付いている包帯を解き始めた
もしかして…
「手当て…して下さったんですか…」
「まぁな」
俺はその言葉に申し訳なく思ってしまう
だって俺は…
「自殺しようとしていたのに余計なお世話だったか?」
「……ッ!?」
「図星か…」
ジッと見え透いた様な目で俺を見てくるその人と目を合わせられなくなりソッと目を逸らす
暫く沈黙が続く
その間彼はただ俺の身体を再び手当てしているだけだった
「あの…」
先に口を開いたのは俺で,何を言っていいのか分からない状態だったけど,なんで事情を知ってて助けたの、とか、色々聞きたいことはあった
でも上手く言葉が出てこない
「なんだ,言いたいことが無いなら俺から言わせてもらうぞ」
「え,あ…はい」
「何故自殺しようとしていた?」
俺はドキッと胸が跳ねる音がした気がする
何故,と言われて説明が上手く出来る訳じゃない
なんて答えるのが正解なんだろう…
「言えない事か?」
「…生きる意味が無かったからです」
俺が布団を握り締めながら答えると横で「ハッ」と鼻で笑う声が聞こえた
え,俺今笑われた?割と本気だったのに…
「生きる意味ねぇ,なら俺なんかとっくに命投げ捨ててるだろうな…コレだから餓鬼の考えはあめェな」
「…」
「まぁ,どうせ捨てる命だろ?なら俺に寄越せよ」
「え…?」
彼の言葉に目を見開く
どういう事?
「俺な,実験してみたかった事が有るんだよ。」
彼はそう言っては俺の顎に手を添えて強制的に目線を合わせさせられる
「魔力がほとんど無い普通の平民を俺の手で魔導師に育てられるか気になるんだよ」
「魔導師に…」
「そう,俺がテメェを魔導師にしてやる。だからテメェは国の為に働け,そして死ね。ほら,生きる意味なんざすぐ作れるだろ?」
そう言って怪しげに笑う彼とは裏腹に俺は何か暖かで明るいなにかに触れた気がした
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