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第46話 告白編41

 週末、オキに言ってあったとおりに、俺は理事長に借りているシェアハウスへと久しぶりに帰ってきた。 「……ただいま~」    恐る恐る家の中へと入るが、まだ誰も帰ってきていないようだ。  少しホッとしながら、とりあえず荷物を置こうと自分の部屋へと向かう。  何日かぶりに訪れた自分の部屋は、当然ながらあの日から特に変わった様子はない。  この部屋で、ストーカーを騙すためにみんなで小芝居をしたのが、昨日のことのようだ。  荷物を置いてベッドへと腰掛けると、カメラを仕掛けられたテディベアが置いてあったスペースが目に付いた。  そうだ……俺、このベッドの上で陽愛くんに……。  俺は、事件解決のきっかけになった写真を撮られた時のことを思い出してしまった。  あの時は、飲み物に入れられた睡眠薬のせいで、なんだかぼーっとしていて抵抗も出来なくて……。  ふと、そこまで思い返して、俺の考えは止まってしまった。  ……本当に、あれは睡眠薬のせいだったんだろうか? 陽愛くんの声が心地よく感じたのも、頭を撫でてくれる手を気持ちよく感じたのも俺の気のせいだったのか? 「…………」    何だか沈みそうな気持ちを吹っ切るために、俺は部屋を出て一階へと戻った。  懐かしむように室内を見渡すと、玄関近くのボードにいつの間にか写真がたくさん貼られていることに気づいた。  俺が出て行った時にはあんなの貼っていなかったから、ここ数日の間にみんなが貼ったもののはずだ。 「……なっ……」    貼られていた写真の正体を知って、俺は驚きとも呆れともいえる様な複雑な思いを抱いた。 「……なんで俺の写真を貼りまくってるわけ?」    たぶん、それらはあの用務員から没収したであろう俺の写真なのだろう。  その量からいって、没収した中のほんの一部だろうけど……。 「もしかして、みんなで厳選して貼ったの?」    その光景を想像したらおかしくて、俺は我慢出来ずに笑ってしまった。  四人で何て言いながら選んだのかは知らないが、そこは見事に俺一色になっていた。 「どうせなら一緒に写ってる写真を選べばいいのに……」    そう呟いてから、あの束の中で一緒に写っていた写真の内容を思い出して一人で赤面してしまった。  あんなものをここに貼られたら困る。 「…………」    思い返せば、この家に来てから色々なことがあった。  みんなで賑やかに食事したり、次の日が休みの週末には朝方近くまで飲んで寝坊したりもした。真面目に文化祭について意見を出し合ったり、四人が一生懸命にストーカー撃退の作戦を考えてくれたことも、今になってはいい思い出だ。  みんな、俺のために本気で動いてくれたんだよな。  ストーカーの正体がまだ全然わかってなくて俺が不安だった時に、春樹はいつもそばで励ましてくれた。  オキは少しの手掛かりしかないのに、文化祭準備の忙しい合間をぬって犯人を捕まえる方法を探してくれた。  犯人を追いつめる時だって、俺が触られただけで涼介が我慢出来ずに部屋に飛び込んできて犯人捕まえちゃったり……あの温厚な陽愛くんが犯人の胸倉掴んで本気で怒ってくれたり。  いつだって、みんなは俺のそばにいてくれた。  ……今ならわかる。みんながどれだけ俺のことを愛してくれていたのか。  そして、俺がどれだけみんなのことを愛しているのかが。  今まで俺が自分の気持ちを認めずにいたのは、きっと、俺がみんなの気持ちを受け入れたら一緒にいられなくなると思ったからだ。  もし、俺達の関係が学校にばれたら……もし、俺が四人のうちの誰か一人を選ばなきゃいけないとしたら……。  そうなったらと思うと、俺は怖くて自分の気持ちを認めることなんて出来なかった。  でも、みんなが言ってくれたから……。 『四人もいれば雪ちゃん一人くらい十分に養えるしね♪』 『俺も、これを機にゲーム制作の在宅ワークでもいいかな』 『それだけの覚悟は好きになった時からもってる』 『俺達は学校を辞めたって構わない』    あのそれぞれの言葉は、俺達は学校だけの関係じゃない。俺は誰か一人を選ぶんじゃなくて、四人とも好きでいていいってことなんだよな。  最初に陽愛くんに告白された時から、きっと俺はみんなとのそんな関係を望んでいたのかもしれない。  だから、ソファでオキに、風呂場で春樹に迫られた時も、キッチンで涼介、俺の部屋で陽愛くんに触られた時も……本気で抵抗することが出来なかったんだ。  そして、みんなの想いが俺と同じだってわかってしまったあの日は、もうみんなを受け入れるしかなかった。  俺は、みんなに抱かれた中央のテーブル辺りへとゆっくり近づき、そばのソファへと腰を下ろす。  目を閉じると、あの日のみんなの熱い息づかいや甘い愛の告白が脳裏に蘇ってくる。 「俺も……みんなのことが……好きだよ」    素直に言葉に出して認めると、あの日のみんなに触られた感覚が一気に思い出されて、身体が内側から熱くなってきた。 「……んっ……」    頭では駄目だと思うのに身体は我慢がきかなくなってきて、どんどん高まる熱に呼吸も荒くなってくる。  あの日……ここで、みんなに抱かれたんだ。  そう自覚すると、あの時のみんなの愛撫がはっきりと思い出される。

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