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第14話 告白編9

「見せたかったのは、こっち」      そして、数枚の写真がテーブルへと広げられた。  それは、俺達が個人だったり、数人で写っているものだった。 「あっ、これ……この前、俺が雪ちゃんに抱きついた時のだ」      そう言って春樹が一枚の写真を指差す。 「あれは抱きつくじゃなくて、タックルな」 「ああ……結構、売れ行きいいですよ、それ。後……これとか」      春樹の指差した写真を覗き込んだオキが説明してくれて、それから新たに違う写真を見せてきた。 「なっ……!」      その写真を見た途端、俺は自分の頬が熱で熱くなるのがわかった。 「可愛く撮れてるでしょ?」      俺の気持ちに気づいているだろうに、オキは笑いを含んだ声で聞いてきた。 「ずる~い、オキ」  さらには春樹が羨ましそうにそんなことを言うものだから、余計に恥ずかしくなってくる。  その写真には放課後の教室で俺とオキが並んで座っていて、そのオキの肩にもたれ掛かって俺が寝ているものだった。 「文化祭の相談してたのに、雪ちゃんったらいつの間にか寝ちゃうんだもん。あまりに可愛いから北斗を呼んで撮らせたの」 「北斗って俺のクラスの?……あ~、確かにアイツ、オキのファンだもんね。オキが呼べばすぐ来るか」      って、ことは俺はこの姿を武井に見られていたってこと?  いや、それどころか、この写真の売れ行きがいいってことは不特定多数に見られてるってことじゃん!  そんな俺の動揺を気にせず、オキはどんどん話を進めていく。 「みんなの写真とは別に、後は山ちゃんにデザインしてもらって、涼くんに家庭科部としてTシャツを作ってもらうのも有りかと」 「うわ~、なんか楽しそう♪」      春樹が賛同したことに気をよくしたのか、オキの熱弁は止まらない。 「今回のことで俺達の需要が高いことを確信しました。これはもう、ビジネ……写真部のテーマとして取り上げないてはないですよ!」      オキ……さりげなく言い直したけど、今、絶対ビジネスって言おうとしただろ。 「オキ~、そんなことしてどうする気?」      俺達は教師なわけであって、生徒主催の文化祭にそこまで出張る必要ないだろ。  そう思って聞いた問いかけに、オキが静かに口を開いた。 「一つだけ言うならば……」      俺と春樹が次の言葉を待つと……。 「私はお金が大好きです!」      うわ~、言い切っちゃったよ、この人。そりゃあね、真面目な答えは期待してなかったけど。 「あはは、オキらしい~」      なんて春樹は笑ってるけど、仮にも教師としてどうなの、その発言。 「そんなこと言うなんて……俺の知ってる可愛いオキちゃんは、どこ行っちゃったんだよ~……」      オキのあまりの現実的な願望に俺が嘆きながらそう聞くと、オキはいつものアイドルスマイルで答えた。 「俺はいつだって雪ちゃんが好きな可愛いオキちゃんですよ」      そう言って俺の右腕に擦りよってきたオキをついつい小動物のように撫でてしまう。  こうしてれば、可愛いのにな~。 「雪ちゃん、オキばっかりズルい!」      しばらくすると、春樹がふて腐れたように騒ぎだした。  もう、この頃にはみんな、きっと酔っていたんだと思う……いや、酔っていたはずだ。  そんな状態で、俺は自由になる左手で春樹を手招きした。 「わかったわかった。ほら、春樹もおいで」 「わーい、雪ちゃん大好き♪」      途端に笑顔になった春樹が俺の空いている左腕へと飛び込んできた。 「よしよし、二人とも可愛いよ」      そう言いながら、俺は擦りよってくる二人の頭を撫で続ける。 「ごめん、遅くなっ……」 「仕事が長引い……て……って、何やってんだよ?」      その両手に花(って言っていいのか?)状態の酔っぱらい三人を、タイミング悪く部屋へと入ってきた陽愛くんと涼介が見て言葉を失ったのは言うまでもない……。

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