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第2話 〜始まりは逃走〜
「ハァハァ、ハッ……ァ……ハァ……」
もう息が上がって上手く呼吸ができない。
胸が張り裂けそうでとても苦しかった。けれどもっともっと遠くに逃げなきゃという焦燥感に駆られ、ボクの脚は前に進むことを止めない。
あれからどれくらい走り続けているのだろう……。
真夜中の不慣れな森林をボクはただひとり、靴も履かずにずっと走り続けていた。あの屋敷を抜け出してからもうかなりの時間が経過している。
あそこにいる人たちはそろそろ屋敷内の異変に気がついただろうか……?
だとしたら尚更ここで脚を止める訳にはいかない。もし捕まればボクは今度こそ確実に殺されてしまう。そんなことが容易に想像できて、ボクはぶるりと身を震わせる。
でもその思考をなんとか頭を左右にブンブン振ることで無理やり外へと追いやった。
そして己の両肩をきつく抱きしめて負けそうになる気持ちを奮い立たせ、疲労が溜まって重くなり始めた脚を引き摺りながらなんとか前へと進める。
疲れた身体は悲鳴をあげるけどそれにも気づかないフリをして、土地勘のない暗闇の森林をさ迷い続けた。
ただあの人たちから逃れたい、
その一心で突き進み、
時間も忘れ無我夢中で走り続け、気がつけば東の空が白み始めていた。木々の隙間から一縷の光が目の前に神々と降り注ぐ。
まるで惹かれるようにボクの脚はそちらへと向かっていた。
―――あぁ、
久しぶりに見た太陽は言葉では言い尽くせないほど、本当にとても美しかった―――…。
溢れ出た涙がほろりと頬を一筋伝う。
神々しく昇り始めたそれに気を取られ、ボク自身が森林の中から抜け出たことに気づけなかった。
土を踏んでいたハズの素足に硬い感触を感じ、ふと脚を止める。放心状態のボクはゆっくり下を向くと、きれいに舗装されたアスファルトが目に入って驚いた。
永遠に続くと思われた森林を抜けたのだとボクはようやく気づく。
「………ぁ……」
疲労から声も掠れてあまり出せない。
それでも渇いた喉から息が洩れたのと同時、東の方から何やらけたたましい騒音が鳴り響いた―――…。
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