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第11話

「でもさぁ、このちっこいの……スッゲー煌騎に懐いてねぇ?」 さも意外だとでも言いたげに流星がポツリと言った。少年の身柄を確保する際、こいつはかなりの抵抗と拒絶に遭ったらしい。 心外な言葉に俺はピクリと反応し、眉間に深くシワを寄せるが隣りで和之がクスリと笑う。 「うん、それは俺も思った」 「そういやさっき、煌騎のこと“コウちゃん”って呼んでたよな、こいつ……」 どういうことだ? と神妙な面持ちで流星が頭を抱え、ゔ~んと唸り出す。端から俺の言葉を信じていない奴らだ、不思議に思って当然だろう。 そこへ普段から冷静沈着な朔夜が控えめに尋ねてきた。 「煌騎、本当にこの子のこと知らないの?」 「………さぁ、どうだろうな」 だが俺はまたも曖昧な言葉で濁した。――というより濁すより他なかったというのが正しいか。 ……まだ、確信が持てない。 こいつも俺と認識した上で抱きついてきたようには見えなかった。 車中で姿を見かけた時、もしかしたらという胸騒ぎが胸中を駆け巡ったのは事実だが、しかし本来それは絶対にあってはならない事だった……。 もしこいつが俺の知る人物と同一なら、コトは俺たちだけの手では余る。最悪……いや、必ず本職の方々がお出座しになるだろう。 すべては慎重に見極め、行動しなければならなかった。 「……何だよ煌騎、またはぐらかす気かよッ」 「こらこら、そう目くじら立てなさんなってバカ流星」 俺の曖昧な言葉に苛立った流星が少し怒気を帯びた声を発したが、横に立つ和之が直ぐさま奴を窘めた。 目敏い和之や朔夜なんかは俺の顔つきで、ある程度の深刻さは予測しているのかもしれない。 それでもただ静かに“大丈夫なのか”と目で訴えるだけに留めてくれている。俺はそれに無言で頷き、腕に抱く子供をそっと見つめた。 少し力を込めれば簡単に折れてしまいそうな程、こいつの身体は軽くて華奢だった。恐らくは飯もろくに食わせて貰えなかったのだろう。 ―――俺の知る人物によく似た少年……、 見れば見るほど不思議な子供だ。 既に俺はこいつの正体も関係なく惹かれ始めている。 だが将来が定められている身の俺にとって、果たしてこの出会いがよかったのかどうか……。 正直、悩むところだった―――…。

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