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第12話〜動き出したボクの時間〜

―――アレ何だろう、とっても暖かい……。 ボク、何かに包まれてる? ゆっくりと頭が覚醒し始めて、まず温もりが何なのかを手で確かめてみる。 ペタペタ触るとどうやらボクは誰かに後ろからぎゅっと抱き締められていて、その上から肌触りの良い毛布が掛けられているようだった。 (………なんだ、やっぱり全部夢だったんだ) 現実味のない出来事にまだ夢の続きを見ているのだと悟ったボクは、うふふと自嘲的な笑みが溢れてしまう。 昨日は本当に不思議な事ばかりが起こって、変だなぁって心の何処かで思っていたから……。 だけどちっとも悲しくなんてない。だってこれがボクの現実、覚めない夢なんてこの世にはないんだ。 儚い夢を噛み締めるように思い出し浸っていると、ボクのすぐ真後ろで何かがモゾモゾと動き出す。 何だろうと薄目を開け後ろを振り返れば、何故だか夢の中に出てきたキレイな男の人の顔が目の前にあった。 「………あれ……?」 瞬間、ドキリと胸が高鳴る。 慌てて目を閉じて瞼を強く擦っても、それはボクの前から消えてなくならなかった。 あれ? あれ? っと混乱するボクを余所に彼は一応起きてはいるものの、寝惚けているのか虚ろな瞳でまだ焦点が合っていない。 「やっと目が覚めたのか、もう夕方だが腹は減ってないか?」 彼は目が合うと欠伸を噛み殺して起き上がり、ボクの頭を撫でながら小声で「おはよ」と囁く。 ボクは久しぶりにされた起床の挨拶に何故か嬉しくなり、一緒に起き上がってニッコリと笑い「おはよ♪ 」と返していた。 でもふと自分の身体の変化に気づき、オロオロし始める。漸くこれが現実なのだと理解はしたけれど、寝ている間にどうしてだか身の回りが小綺麗になってしまっていたからだ。 髪も身体も洗ったみたいにツルツルになっているし、薄汚れたワンピースも真っ白で可愛らしいヒラヒラのものに着替えさせられている。 どういうことなのか遠慮がちに隣りの男の人を伺い見るけど、彼はニヤリと意地の悪い笑みを浮かべた。 途端にボクは竦み上がり、上手く追求する事ができなくなる。

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