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君から触れて、この罪に。
庭に咲いている花の方がまだ自由だ。
「旦那様……好きです。旦那様、好きです」
縋るように、甘えるように、奏でるように君は啼く。
今宵も啼く。誰かために泣く。なぜ鳴く。
「旦那様、旦那様」
何度も名前を呼ばれれば、その声に愛しさが湧くのもまた事実。
泣きながらも必死で私に手を伸ばす幼いその手を、シーツに縫い付けて腰を振る。
年若い妻に今宵も種を植え付ける。。
貿易商で栄え、財閥解体後も土地を転がし莫大な富を得た我が家は、国に金貸しし地位も確実のものになっていた。
ただ一つ、偽善行為を覗けば。
それは、私が成人して間もなく。本家の跡取りである私を父が呼びつけた。人払いをし、隣の母と寄り添うように座り、私を見ていた。
「君の婚礼の相手を見つけてきた」
「……はあ」
「この吉田家は代々αしか生まれないのは知ってるだろう。Ωの社会的迫害も」
「何度もお聞きしました。それで婚礼はいつでしょうか」
何度も聞いた、耳にタコのできる話だ。αしか生まれない吉田家が、迫害されているΩを娶ることは決まり事。
少しでもオメガの社会的地位への手助けにというが、それはつまり私の自由はないということだ。
母は分家から生まれたΩ。妹もΩだが、どうしても男はαしか生まれない。何かの呪いではないだろうか。
「婚礼は三日後。吉田家の跡取りとして、そしてαとしてΩのお嫁さんを大切にしてあげてね」
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