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第13話

翌朝、午前7時ーー 尋夢は腰を撫りながら階段を登り、翼の部屋のドアをゆっくりと開ける。 「つばさーっ、起きろって何度言ったら分かるんだ。遅刻するぞ〜」 「ぅんん〜……あと、もうちょ……と……」 「もうそんな時間ないだろ! 起きなさい」 「尋くん……おに」 布団の中から手を伸ばし、尋夢の腕を掴むと、そのまま自分の胸元へと引き摺り込む。 「うわわっ!」 「……っくく。……尋くん、おはよ」 掠れた声で、目を閉じたまま翼は尋夢に語りかける。 「身体、痛くない……?大丈夫?」 「……馬鹿っ。いちいちそういうこと、聞くな」 昨夜の行為を心配する翼の言葉に、尋夢は照れながらも、ぶっきらぼうに答える。 でも、内心は嬉しくて仕方がなかった。 今朝目を覚ました時、昨日の出来事は全て自分にとって都合の良い夢だったのではないかとも思えていた。 だから今、こうしていつもと同じ朝を迎えながらも、翼の心配をする言葉が聞け、親子としての関係が崩れていないまま、お互いの思いが通じあったのだと実感できた。 「尋くん、いつもの挨拶しよう。……あ、でも今日からは、こっちね」 「んんっーー」 いつもは一方的に翼から与えられていた、頬へのキスが、唇同士が触れあうものへと変わっていく。 「おはよう……尋くん」 「おはよう、翼」 父と子、そして……恋人として、いつもと変わらない、相手を思って過ごす1日が、今日もゆっくりと始まった。 fin.

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