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君との未来、終わりの瞬間
遠くで聞こえる声の暖かさに凍えているように冷たい何かが溶けていく感覚が、とても心地良くて──……ずっと感じていたいなぁと思いながら、彩斗はその"声"を感じていた。
しかし、はっきりと聞き取ったとある"言葉"に思考がはっきりと機能しだした刹那、頭に広がった鈍い痛みに呻き声を上げて、身体が軋む感覚を覚えつつも重い瞼を開ける。
「た、い……よ、さ……っ」
「あ、彩斗……!?嘘、どうしよう……!」
「と、とりあえず落ち着こうか、結花?」
「た、いようさ……っ!」
結花の五月蝿さと声が掠れて思い通りに出ない事、そして返事をしてくれなかった自身の太陽なる人に小さな苛立ちを感じ、軋む身体で無理矢理に半身起こして人口呼吸器のマスクを外し、声を荒げた刹那。
「彩斗……っ!」
「……!」
抱きつかれた衝撃で全身に走った痛みに耐えつつ、小刻みに震えている自身の太陽なる大切な人を抱きしめ返して自身よりも暖かな体温を全身で感じた。
「よか……っ、彩斗、目ぇ醒めて……っ!」
「は、い……太陽さんは、怪我、大丈夫……?」
「おぅ……、左腕、骨折だけで、済んだ……」
「え……っ、利き手じゃ、ないすか……!」
「おれ、右もある程度は、使えるぞ」
鼻をすすりながら必死になって泣いている事を隠しているが、彩斗にバレている事を何となく察しながらも動くに動けないでいる太陽は、それならばと半ばヤケクソで彩斗に抱き付いていた。
そして、全てを察している彩斗はと言うと、ニヤニヤしながら此方を見ている姉とその婚約者など気にならない程に焦っていたのだ。
太陽に抱きつかれた事、いつもよりも柔らかな口調、泣かせてしまった事──それも原因と言えば原因だったのだが、一番は……──
「太陽さん……俺と、もう……前の、関係に戻れない……って、なんですか」
「え……、」
「俺、俺は、ずっと……、ずっと伝えて、きましたよね……?好きだ、好きだって」
「ちょ、待……っ!いきなり何を……っ!」
ガバッと勢いよく密着していた暖かな太陽の身体が離れてしまった事に寂しさを覚えつつも、涙目な上に真っ赤な太陽の顔を見た瞬間に胸が満たされ、自分も大概、単純だなと自嘲してから太陽の泳いでいる瞳を見つめて。
必死に、そして自身の思いを否定しないで……と、言葉にのせて。
「"永 い"期間にも及んで、御迷惑を、おかけしますが、よろしくお願いします。太陽さん」
「……!」
「って、"再会した時"に……俺、言いましたよね……?太陽さん」
「……っ!」
もう、諦めるなんて──……出来ないから。
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