11 / 17
Ⅱ 見せしめなら俺がなってやろう⑤
つまりは、そういう事なんだ。
ベルの世話は俺にはできない。
余計な面倒は嫌だから、俺を外した。
最初っから俺は……
(パートナーじゃなかった)
誰にでも分かる最適解だ。
命懸けの悪魔育てに、不要な懸念は極力避けたい。
俺は、こいつの不安材料だったって事
「悪かったな」
腕からスルリと抜け出して、立ち上がった。
「新しいパートナー探せよ」
「おいっ」
「ならば俺と共に参りましょうか」
体に糸が絡みつく。
無数の繊維が俺の体躯を手繰り寄せる。意志とは無関係に。
吹っ飛ばされた飛鳥モドキが復活している!
いつの間にか、背後
窓辺に立つ飛鳥モドキに捕まってしまった。
「君はベルフェゴールを呼び寄せるための人質だったが、パートナーを解消したのでは、その役目は果たせません。
仕方がありませんから、俺を悦ばせて頂きましょう」
この場合の悦ばせるは、一発芸とか歌を歌うとかのお楽しみ会的な事じゃない。
飛鳥モドキが唇を首筋に寄せてきた。
「やめてェーッ!」
「やめろォーッ!」
床を蹴った。
本物の飛鳥が飛びかかる。
だが
「動くな。動けば首と胴が離れるぞ」
糸が飛鳥の首を捕らえている。
「先刻は油断したが人間風情が……」
「五月蝿 ェ!」
飛鳥ッ
飛鳥が駆け出した。
首と胴は離れていない。繋がっている。
仕込んだ金属製の定規が糸を切断した。
でも、なんでっ。
お前は危険を犯してまで
(俺を助けるんだ?)
「人間が触るなァッ」
見えない壁が拳を弾いた。
飛鳥の体がのけ反って、仰向け様に床に倒れた。
(優等生のお前が、どうしてこんな泥臭い事をっ)
「……では、悪魔の一撃ならば受けるか」
コキン
窓際に垂れ下がったカーテンを伝って、後頭部に必殺の蹴りを入れたのは……
チビッ子ォォー★
バランスを崩した飛鳥モドキに足払いをかけたのは、飛鳥だ。
モドキから解放された俺だけど。
倒れるッ
………あれ?痛くない。
床の上の飛鳥がクッションになって、俺を抱き止めた。
「危ない真似をするな!俺を心配させるな!」
「心配の種だから、俺を遠ざけたんだろっ」
「五月蝿い」
分からないなら教えてやる
これが、答えだ
……と。盛大に怒鳴った唇が
俺の唇を塞いだ。
ともだちにシェアしよう!