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Ⅱ 見せしめなら俺がなってやろう⑦
「いい加減、気づけッ」
間近に迫った苛立ちを隠せない瞳
さっきまで俺の口を塞いでた唇が、艶かしく濡れている。
「俺が生徒会長をしているのは何のためだ」
「え?」
「え、じゃない!そうやってお前が無防備すぎるから、悪い虫がつかないようにするために決まってるだろう」
「……決まってるって」
「生徒会長になったら忙しくて、お前を見てられなくなったから、お前を体育祭実行委員にした。少しでも一緒にいる時間を取れるように」
確かに体育祭では生徒会の指示で動く機会が多かった。
「学力No.1も、陸上No.1も、お前に見合う男になるためだ」
それじゃあ、こいつは蔭ですげー努力してきたって事なのか。
「ベル様は魔界の悪魔共が命を狙う、高位の首座悪魔だ。危険に巻き込まれないよう遠ざけたら、自分から危険に首突っ込んでくる。
お前は何を考えてるんだ」
みんな俺のためを思って、こいつは……
真っ直ぐ見つめる瞳の中に、俺が映っている。
本気で怒って、本気で心配して。
天使の微笑みは、一カケラもない。
そっか……
俺、こいつのこんな顔が見たかったんだ。
本音で向き合う、お前の顔
悪魔の契約で、俺が望んだ願いとは………
「結局、何も通じてなかったのでしょう?貴方の想いは。
では思い残す事はありませんねぇ。
俺が消してあげますよ。
オリジナル飛鳥サン!」
ダメージを受け、姿が保持できなくなったのか。髪で隠した顔の左半分を手で覆っている。
こいつは飛鳥の振りして近づいた悪魔だ。ベルを亡き者にするために。
「貴方を殺して、俺が貴方になり代わりますので御案じなく。
浅はかな想いを信じて裏切られる。自らを絶望に突き落とす想いを抱くのは、愚かしい」
……理解 ったでしょう?
「想いなど、ゴミなのですよォォー!!」
「黙れェェェーッ、下等悪魔ァァァー!!」
真っ先に体が動いた。床に散らばったガラスの破片を俺は拾う。
キラン
破片に陽光が反射して、モドキの目が眩んだ一瞬
飛鳥のまわし蹴りが、モドキの顔面を直撃した。
「これでも想いが通じてないって?」
「アァン?」
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