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不幸
「櫻井!」
アルコールの匂いが充満した病室に僕の専属執事、櫻井が体中に包帯を巻き付け眠っていた。僕が近づくと気配を感じたのか目を醒ました。
「彼方様…をお守り、出来て………良かっ、たです」
出しにくい声を必死に出し、力無く笑うその顔は痛々しかった。
「幸い一命は取り留めましたが右足を切断させてもらいました」
医者の言葉が耳から耳へと通り抜けていく。
頭に思い浮かぶのは櫻井を自分の執事にしてしまった事。僕に関わらなければこんな事にはなるはずが無かった。
罪悪感で押しつぶされそうになるが必死に彼の手を握る。しかし、その握っている自分の手には白い手袋がしてあり、素手で櫻井の手を握ることのできない自分に腹が立つ。
こうなってしまったのは数時間前に戻る。
僕は桜城 彼方。
今日は僕の執事の櫻井の誕生日であり精神科医の朔也先生と兄の理人を呼んで別邸の僕の部屋でパーテイーをする事となった。
僕が櫻井とのルールの中の1つに使用人であろうが櫻井の誕生会は必ず開くと決めたのだ。
と言っても僕は過去のある事件を堺に重度な潔癖症と診断され今までできていた事のほとんどができなくなってしまい同じお皿の物をみんなで食べる事もできない。
本邸には父と理人と使用人がいるのだが一緒に暮らすことができず別邸を建て今はここに住んでいる。
そしてこの三人は唯一部屋に入れることが出来るのだ。
そして今は買い出しに行っている。
本来ならすべて他の使用人に頼むとこだが僕の潔癖症を治すべく良い機会だからと朔也先生と櫻井と共に出かけている。
櫻井には待っててと何度も言ったけど着いてくると聞かなかったから一緒に来た。
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