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第1話
よく晴れた5月。
祝日の朝、同棲中の鈴鹿みずきと楠木アキラはいつものようにのんびりと平和な時間を過ごしていた。
そんな時、2人が住むアパートのインターフォンが一回鳴り響く。
「ん?こんな朝早くから誰か来た?」
ソファに座っていたアキラは首を傾げてみずきにきく。
「新聞の勧誘か何かだろうか」
家主のみずきはアキラに返事しながら玄関に向かう。
覗き穴を見てみるが、誰か立っている様子はない。
「……」
そっと玄関の戸を開いてみる。
そこには…
「っ!…え?アキラ、大変だ!」
目の前にある光景に軽く混乱してアキラを呼んでしまう。
「ん?どうしたー?」
慌てるみずきを尻目に、のんびりとマイペースに答え、アキラはみずきの元に歩いて行く。
「アキラ、子どもが…」
「子ども?って…え、親は?」
2人の目の前には、ベビーカーに乗った1才くらい赤ちゃんが眠っていた。
インターフォンを鳴らしたのが親のはず。
みずきは急いで辺りを探してみるが大人の姿は見当たらない。
「いないな、どこへ…」
「あ、みずき、手紙が…」
赤ちゃんの横に手紙らしきものが…
「本当だ」
アキラが見つけた手紙を手に取ってみるみずき。手紙にはこう書かれていた。
『突然のお願い申し訳ありません、止むに止まれぬ事情により育児ができなくなってしまい、先日偶然お見かけした、優しそうなあなた方お2人に、3日間この子を預かってもらいたいのです。
必ず3日後に迎えに来ますので、警察には言わないでください、どうかよろしくお願いします
。』
一歳、男の子、名前はりくと。
手紙には子どもの情報が少し書いてある。
「……」
突発的な出来事に混乱して、手紙を持ったままみずきはその場で固まってしまう。
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