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第13話

そうして、そこはかとなくその日も終わり、夕食の時間… 不意にインターフォンの音。 「来客?りくとの親かな」 「見てくる」 「オレも行く」 「はい」 そっと戸を開くと… そこには細身の若い男性が立っていた。 「すみません!うちの子を、りくとを預かっていただいていた者です」 いきなり頭を下げる人物。 「え、」 「え?もしかしてりくとのパパ?」 アキラはそう質問する。 「はい、手術のために急に入院しなくてはならなくなって、どこにも預けるあてもなく、本当に勝手をすみませんでした」 「りくとのママは?」 「うちは父子家庭で、母親はいないんです」 「あ、だからパパだけ喋れたのか…」 「みずきに懐いたのも、みずきが本当のパパに髪型とか少し似てるからりくとが間違えてたのかも」 「確か手紙にも母親だとは一言も書いてなかったな」 先入観で勝手に勘違いしていた。 「りくとは元気ですか?ご迷惑をおかけしてませんか?」 「うん、すごくいいコだったよ、3日間の様子はノートに書いてるから」 みずきは奥で寝ているりくとを抱いて連れてきて本物のパパに抱き渡し、荷物はベビーカーに乗せて返す。 「ありがとうございます、あなた方ご夫婦を選んで良かった」 「いや、夫婦じゃないから」 アキラが突っ込むが… 「あ、失礼しました」 「病気は大丈夫?」 「はい、大丈夫です。腹腔鏡手術だったので傷も小さいですし早く退院させてもらいました」 「大変だな」 「困ったら数時間くらいならまた預かってもいいよ」 「ありがとうございます、また後日お礼に伺います」 「うん、りくとまたなー、パパはお大事に」 アキラはバイバイして別れをいう。 そうして、3日間の子育て体験は幕を閉じた。 部屋に戻り2人はソファに腰を下ろす。 「行っちゃったな」 「あぁ」 嵐のような数日間だが…なんとなく寂しい気持ちになる。 「大変だったけど、ちょっと寂しいな」 「あぁ」 「残念、みずきが本当のパパになれるチャンスだったのに、本当のパパが来たから無理だったな」 不意にくすっと笑って… 「……」 「ね、子ども欲しくなった?」 また囁くアキラ。 「え?」 「オレといたらお前の子どもできないよ?」 「アキラ…」 「だから、みずきはちゃんと女の子と付き合って、将来考えた方がいいと思うけど」 「アキラ」 首を振り否定するが… 「お前が子ども欲しいって思うなら、いつでも別れていいからな」 「子どもは可愛いけど、アキラがいなければ意味がない、俺はずっとアキラの事が好きだから」 「…みずきはいいパパになれると思うけどな」 「俺はアキラの恋人でいたいから」 「う、ん…ありがとな」 そのまっすぐな想いに、複雑に頷いてその温かさに流されてしまうアキラだった。 【終】

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