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恋をする甘党の彼_3

「どういたしまして」 「ボク、また、たべたいな」  と、真野の手を握りしめられる。 「良いよ。また作ってあげる」  可愛い子のお願いを断る事などできない。 「江藤さん、また一緒に作ってもらってもいいですか?」 「良いよ。どうせなら浩介にも手伝ってもらうか」 「良いですね。そうしましょう」  一緒に作ろうねと肩に手を置けば、浩介は元気よくハイと返事をしながら手をあげる。  その仕草が可愛くてデレっとしながら見る真野に、江藤が何かアッと声を上げる。 「そういえば、今日、約束があるんじゃなかったか」 「あ、そうでした」  自分から誘ったというのに忘れていた。  すごく喜んでいる浩介にまた今度なんて言えない。 「じゃあ、信崎らが帰った後、俺の家で飲む?」 「良いんですか」  真野や大池は次の日は休みだが、江藤は休みではない。  飲んで悩み相談にまで付きあわせてしまったら申し訳ないと思っていたのだが、今はその申し出は有りがたい。 「構わないよ」 「ありがとうございます」 「じゃぁ、待ってる」 「はい」  仕事があるからと喫茶店を後にするとき、江藤と浩介が手を振りながら見送ってくれてほっこりとした気持ちになる。  もしかしたら泊まる相手というのは浩介の事かもしれない。胸のつかえはとれ、約束の時間が楽しみになった。  会社に戻り自分の席へと向かう途中、喫煙室で信崎が煙草を吸っている姿を見つけ、ドアを開けて声を掛ける。 「お疲れ様です」 「おう、おつかれ。特に問題はないか?」 「はい。特に問題なしです」 「ご苦労様」  と、煙草を灰皿に捨て喫煙室から出てきて、席に戻る間、話をする。 「そういえば、江藤さんの所で息子さんに会いましたよ」  信崎に告げると、ふわりと柔らかい表情を浮かべた。 「江藤の所にいったのか。うちの息子、可愛かっただろう?」  デレデレとした顔見せる信崎に、真野は余程可愛いんだなと思いながらハイと頷く。 「可愛いし、礼儀もちゃんとしてますね。その時に自己紹介してくれて、マフィンのお礼を言われました」 「そうか。流石は俺の息子だ」  と腕を組みながら頷く信崎に、真野は彼の親ばか加減に笑みを浮かべ。 「で、江藤さんの所で一緒にマフィンを作る約束をしました」 「そうか。浩介さ、真野の作ったマフィン、気に入ってさ。息子に付き合ってくれてありがとうな」  ニカっと笑い頭を撫でられ。信崎に喜んでもらえて真野は嬉しくなる。 「いいえ! 浩介君、遅くなっても大丈夫ですか?」 「あぁ。今日と明日は俺んちに泊まるからな」  部屋も汚してないぞと得意げに言う信崎に、本当ですかと真野は目を細めて疑うようなしぐさを見せる。 「お前ねぇ。じゃぁ、日曜にでも確認しに来い」 「え、良いんですか?」  今週は家に行けないと思っていたのでラッキーだけれども、浩介との貴重な時間を邪魔してよいものなのかと考えてしまう。 「別にかまわんぞ。浩介は日曜の朝に帰るから」  と、少し寂しげな顔を見せる。  もしも、寂しいから自分に来てほしいと言うのなら嬉しい。 「わかりました。では日曜日に隅々までチェックさせてもらいます!」  そう言って笑うと、お手柔らかにと信崎に頭を撫でられた。  席に戻ると大池がお疲れ様と声を掛けてくる。 「お疲れ様です。あ、今日の事なんですけど……」  約束の事を口にしよとしたら、 「江藤先輩からメール貰った」  と、江藤のメールを真野の方へと向けて見せる。 「すみません、俺の方から誘ったのに」 「構わない。それに、さっきより明るい顔をしている」  落ち込んでいたのはバレていたようで。  辛くないのなら良いと、そう大池は言ってくれた。 「大池さん、ありがとうございます」 「さ、残りの仕事を終わらせて、定時で帰るぞ」  と仕事に取り掛かる大池に、真野は頷いて仕事をし始めた。

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